就職内定率ほぼ100%のリアル|工業高校は『就活コスパ最強』なのか

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『高偏差値の有名私立大学(文系)に進んだのに、新卒採用で上手くいかず、薄給激務の零細ブラック企業に入社。スキルもなく転職も難しいんです。』

笑えない話ですが、今の日本では珍しい話ではありません。

高校まではエリートコースだった人が有名大学で就活に失敗することはよくある話。
そもそも良い就活を『安定収入』『大手企業』などと考えるのであれば、大学進学そのものが”コスパの悪い選択”かもしれません。
工業高校に進んだ地元のマイルドヤンキーよりも収入も企業規模も低い所で働いているなんてことも…

さて、今日は工業高校から大手メーカーの技術職に就いた方の体験談を元に、”就活のコスパ”について考えてみたいと思います。
工業高校というと『ガラが悪い』『ヤンキーが行くところ』みたいなイメージが強いでしょうか?もしかすると『最強の進路』かも知れませんよ。

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工業高校卒業後の就職先とキャリアプラン

今回は工業高校卒業→大手企業就職のモデルケースとして、メーカーの生産管理に携わるあぽかるさんを例にお話しします。
工業高校の実態から卒業後の生活までリアルに語ってくれました。

体験談の投稿者

工業高校からの就職体験談 あぽかる

1988年生まれ愛知在住のサラリーマン。
愛知県の工業高校を卒業後、メーカーで生産管理的な仕事をやっています(13年目)

ブログ:https://www.apokaru.com
Twitter:@apokaru

有名企業から大人気って本当?

就職希望者の就職率はほぼ100%なので、就職先が見つからないまま卒業していく生徒はまずいませんね。
というのも、工業高校の学生はほとんど、企業から学校に届く求人から選びます。いわゆる企業推薦ですね。
求人には専攻科が指定されていたり、内申点(平均4.0以上など)の基準があることも。
地域差もあるとは思いますが、多くの大企業から求人がきますね!
私の高校では、トヨタ自動車をはじめ、デンソー・アイシンなどのトヨタグループ、三菱重工・三菱電機・旭硝子などの三菱グループ、その他にも新日鉄住金中部電力JR東海LIXILなど…
製造業を中心に、地元の大企業からの求人で溢れていました。
私は愛知県の工業高校にいたので、就職先としてはトヨタ自動車やアイシン精機、豊田自動織機やジェイテクトなどトヨタグループが多かったですね。

就職試験は学力テストと面接が一般的ですが、実際は受ければほぼ合格するような状況。
これはもともと採用前提で求人を出しているためですね。
不合格になった生徒は二次募集に進みますが、ここでもトヨタグループなど大企業からの求人が多いです。

 

工業高校を出れば誰でも大企業に行けるの?

すべての生徒が大手企業に行けるわけではありません。
求人を選べるのは成績順で、そこにプラスアルファで部活動や技術競技会の成績、欠席日数などが考慮されます。体育会系が好まれることはありますが、成績優位は変わりません。

正直、工業高校のレベルなら上位の成績を取ることは難しくありません。
試験の範囲は狭いですし、そもそも本当に勉強しない生徒ばかりなんですよね…
内申平均で4.5程度あれば、最低でも東証一部上場クラスの企業に就職できます。
ただ、入学時から『企業は欠席日数をかなり気にする』と教師に何度も聞かされましたね。
実際にわたしは三年間無欠席で通しました。

みるおか

成績上位+欠席日数が少なければ大企業は『ほぼ確』で行けるとのこと。
ちょっと勉強すれば上位に行けるし就活も一瞬…

”対努力のコスパ”で言えば最強かも知れないですね。

 

工業高校から大学へ進む人もいる?

学年で数%程度は進学します。大学だけでなく専門学校に進学することもありますが、大学の場合はほぼ100%指定校推薦です。
ほぼ確実に合格できますし、進学自体の難易度は低いですね。ほとんどが地元の私立大学になりますが。

むしろ大変なのは大学入学後。
担任が工業高校から大学に進学して教師になった方でしたが、普通科の高校から進学してきた人と比べると圧倒的に学力に差があったそう。
大学一年目は講義についていくのに必死で、単位を取るだけでも相当大変だったようです。

 

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工業高校卒の社会人生活|仕事内容や年収のリアル

入社後の配属は?

生産現場の技能職がほとんどです。現場の作業員としてではなく、図面を書いたり、機器メンテナンスをしたり、技術的な仕事が多くなります。そういう意味では手に職と言えますね。
私のように生産管理などもありますが、基本的に工場での業務に携わることになります。

ただ、私の会社では研究や開発部門への配属はほぼないですね。
これらの職種では主に大学・大学院で学んできた人が配属されます。
給与面や昇進に関しても、さすがに大卒・院卒組にはかないません。大卒組に高学歴が多いというのもありますが…
高卒でも課長級までは昇進・出世していますが、上位マネージャーを狙うなら大学から新卒入社することをオススメします。

 

年収には満足してる?

学歴別の年収比較出典:男性の学歴別の年収比較(H28)|「学歴なんて関係ない」の真実 生涯賃金これだけ違う|マネー研究所|NIKKEI STYLE

学歴が高いほど平均年収が上がるのは昔から変わらず。特に上位マネージャーが現れる40代以降は顕著。ただ、ストレスや業務負荷を考えれば『少しの努力で、ある程度の給与と安定、スキルも得られる』という工業高校卒のキャリアが大卒キャリアに劣っているとは言い切れない。

年収や仕事内容には満足しています。大手ということで、水準以上の年収はあります。
ライフワークバランスも徹底されていて有給取得もしやすいですね!
大卒同期と比べると少し劣りますが、小中高の同級生の中ではかなり良い暮らしができていると思いますよ。
高卒同期や先輩後輩にも、既婚者、子供二人以上、さらに持ち家・車二台所持レベルの生活をしている人は割と一般的です。

中学の同級生の中には、大卒からブラック寄りの中小企業に引っかかってしまい、職を転々としている人もいます。旧帝レベルの高学歴でも新卒でブラック企業に入社し、数年で辞目てしまった人も…。
特に私の世代はリーマン・ショック後の就職氷河期と重なっていたため、相当厳しかったようです。

その点、工業高校では大企業からの求人は不況時でも途切れません。
工業高校から就職というルートは、コストパフォーマンスという点で非常に優れていると10年以上勤めてあらためて実感しています。

みるおか

最近は大卒でも結婚はおろか、一人暮らしが厳しいほどの待遇で働く人も多いですよね。その点、大手メーカーの給与と福利厚生はありがたい!出世欲がない人は、わざわざハードな『大学新卒』での就活競争を選ぶ必要はないのかも…

 

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なぜ工業高校の就職率が良いのか?

工業高校の授業は実践的

工業高校の授業内容は普通科目と専門科目に分かれます。
普通科の高校よりも普通科目は少なく、例えば数学は3年間で数Aがありませんでした。
専門科目は機械科や電気科、土木科、建築科など科によって内容が変わります。私の出身である機械科では、機械製図(機械部品の図面など)、工業数理(工業分野の数理処理や技術など)、基礎プログラミング、その他にも自動車工学生産システム技術などの科目がありました。
専門科目には実習授業もあり、工作機械(旋盤やフライス盤など)を使っての機械加工や溶接、PC実習ではCAD製図やWord、Excelなども学習します。

また、資格取得も専門科目の中に組み込まれています。
国家資格レベルのものでは危険物取扱者製図技能士などを取得しました。
特に、就職に直結する資格や知識を学校で学べるのが大きいですね。学習意欲のある生徒には応用学習にも対応してくれます。

 

工業高校の上位互換!?高専との違い

工業高校と高専を混同する人も多いですが、全く違います。
高専は基本的に5年制で、3年終了時に高校卒業資格が、卒業後には短大卒業資格が与えられます。高校と短大が一つになったイメージですね。

工業高校と比べ、高専は下手な進学校よりも入試難易度が高いことが多いです。
例えば愛知県の豊田高専は偏差値60を超えていますし、進級も難しく、留年する人も珍しくありません。
高専は工業高校よりさらに就職に強く、専門性の高い即戦力として製造業中心に多くの大企業から求人が届きます。就職希望者に対して求人の数が圧倒的に多いため就職先は選び放題です。
私の会社では、高専卒は大卒とほぼ同等の扱いのため賃金面でも有利ですね。

進学面にもメリットがあり、難関大学への編入もしやすいです。
また、高専に設置されている2年制の専攻科も進学でき、卒業時には大卒資格が与えられます。
専攻科卒業から大学院進学というパターンもありますね。
学力の高い人が就職のために工業高校を進学するなら、高専進学を目指したほうが間違いなく有利でしょう。可能性も広がります。

 

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【おまけ】工業高校の学生生活|ヤンキーが多いってガチ?

みるおか

工業高校、高専の就活コスパはわかったけど、ぶっちゃけガラ悪いから怖くないですか?僕みたいな陰キャだと勉強や就活より人間関係が怖いんだけど…

…工業高校といえばマンガやドラマなどの影響か、ヤンキーが多いというイメージがあります。実際に、学力の低い生徒が多く、ヤンキーもいましたが、それ以上に(私含め)いわゆるオタク層が多いんですよ。

また、男女比の偏り…というか、工業高校ではほぼ男子しかいないレベルです。
わたしの学年では200人のうち女子は3人のみ、さらにその3人も科が固まっていて私の専攻科には女子はいませんでした。(ほぼ)男子校という楽しさはもちろんありますが…
私は就職後も男社会だったため、学校や会社での出会いはかなり厳しいですね苦笑
工場に近い技術職ではどうしても男比率が高くなりますから。

 

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おわりに

あぽかるさんをモデルケースとして、工業高校卒のキャリアを教えてもらいました。
筆者は院卒ですが、就活に弱いバイオ系の専攻だったため、新卒ではとにかく苦労しました。
(リーマンショック直後だったこともありますが)

『理工系に進んでおけば良かったなぁ』と思ったことは数知れず。彼らは推薦でどんどん就活を決めていきました。

寄稿して頂いたあぽかるさんは『大卒では出世で差が出る』と書いていましたが、大卒でも上位マネージャーまで行くのはわずかです。
最近は大卒者も出世にギラギラしている人は少なく、キャリアアップを目指す人と二極化していますね。

  • 工業高校に進んで、大手技術職に推薦で入社し、出世せず地に足をつけて働く。
  • 大学に進んで新卒一括採用で狭き門を争う。大企業に受かるかどうかもわからず、就職浪人も…。

これだけ見ると、闇雲な大学進学も考えものですね。
少なくとも『就職に有利だから』『良い生活がしたいから』という理由では。
意思があって大学を目指すのは良いですが、キャリアには『4大卒から新卒一括採用』以外の選択肢もたくさんあります。学生、その親も認識しておくべきではないでしょうか。それでは。