【企業研究】5分でわかる明治ホールディングス株式会社のビジネスモデル

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日本の乳製品メーカートップといえば明治ホールディングスです。
世界の乳製品売上ランキングでも、日本で唯一TOP20にランクインしています。

2011年に明治製菓と明治乳業が統合し明治HDに。グループ売上年1兆円を超える食品メーカーとなりました。以降は総合食品メーカーとして、経営の合理化や事業間のシナジーを活用した商品開発、海外展開を積極的に進めています。

消費者にも、そして就活生にも人気の明治ホールディングス。
この記事ではその事業展開を掘り下げながら紹介していきます。

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明治ホールディングスの事業展開

明治ホールディングスの主要事業は乳製品、そして製菓事業。
この2つを軸に医薬品事業やその他食品も加えたワイドな事業展開が特徴です。
ここでは各事業のルーツや戦略を競合他社と比較しながら紹介していきます。

明治HDの数字|R-1が支えた統合以降の安定成長

明治ホールディングスの売上推移

(参考:連結損益計算書-明治ホールディングス株式会社)

統合した2011年以降は売上1.1〜1.2兆円を維持しており安定傾向。売上に対して営業利益の成長率が高いですね。
この理由はR-1を始めとした機能性ヨーグルト。R-1は2009年に発売し、2012年にテレビで特集された時はほとんどの小売店で品薄状態!それ以降は4年連続で売上2ケタ成長と異次元のヒット商品に。
同時期には主力製品の値上げも実施しますが、市場の成長も合わさり増益に大きく貢献しました。

ヨーグルトによる整腸作用やプロバイオティクス、『腸活』や『腸内フローラ』と言う言葉がブームになったのもこの頃。明治は機能性ヨーグルトの大ブームを牽引することになります。
以降は機能性ヨーグルトの市場は成熟状態になりますが、安定経営を続けています。
ただ、2016年以降の成長鈍化はやや懸念材料。明治おいしい牛乳の内容量ダウン(900mLパックに)もSNSではややネガティブな評価が多く、近年の原料コスト高や薬価改定をカバーしていけるか正念場です。

明治の研究費

(参考:連結損益計算書-明治ホールディングス株式会社)

明治の研究費(対売上)は約2%で推移。金額ベースで車医薬品事業と食品事業はほぼ同じです(2017年度はどちらも132億)。売上比率で見ると、対食品事業では約1%、対医薬品事業では約8%となっています。

食品事業だけで見れば他社と同程度ですが、医薬品の研究(機能性や安全性)を食品開発にも活用できるのは大きなアドバンテージ。この点はヤクルトも同じです。明治が機能性ヨーグルト、乳酸菌飲料に強い理由はここにあります。

ここ数年は株価やROEなどの経営指標も安定傾向。
事業の規模や広さ、ブランド力を考えれば、よほどの不祥事がない限り落ちていくイメージが湧きません。消費者や社員にとっても理想に近い食品メーカーと言えるでしょう。

統合した明治、統合しなかった森永

明治と比較対象に上がるのが森永。
どちらも製菓事業、乳事業を展開し、一方は統合、一方は統合せず独自の道を進むことを選びました。

統合後の明治は物流の効率化なども進め、利益率の成長などを見れば事業も安定成長。統合は成功と言えるでしょう。
森永乳業、森永製菓もここ数年の業績は安定していますが、乳業の売上はやや停滞しています。
経営統合の白紙(2017年)については、投資家からはやや”守りに入った”イメージを持たれてしまいました。統合のニュースが出てから森永製菓&乳業の株は急上昇、白紙とともに急落しています。経営統合への期待が高かったことが伺えますね。

業績好調だから統合しない、あるいは業績好調なうちに統合してさらに競争力を高めるか…
特に森永乳業は2018年、僅差で雪印メグミルクに売上を抜かされており、統合しなくても成長できることを示していかなければいけません。

海外展開はヤクルトが一枚上手か

明治の海外売上高は2018年度で518億、割合にして4%程度。
売上の4割、利益の7割を海外事業で占めるヤクルトと比較すると、海外展開はやや出遅れている印象です。

ただし、日本の乳製品は世界ではまだまだマイナー。ネスレやラクタリス、ダノンなどと比べてブランド力で圧倒的な差があります。
経営計画を見ると、やはり中国や東南アジアなど伸び代のある地域に注力していく様子。
プロテインや乳児用ミルク、介護用流動食などは日本で高いシェアを獲得しており、世界のマーケットに売り出せる商品は揃っています。

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明治グループの製品について

明治グループの代表製品を挙げてみます。

まずは製菓、乳業統合後に総合食品メーカーとなった株式会社明治。
乳製品では明治おいしい牛乳ブルガリアヨーグルトプロビオヨーグルト(R-1、LG21、PA-3)、プロテインのザバスが主力。チーズも人気です。
お菓子では板チョコにきのこ・たけのこシリーズカールなど人気シリーズが揃っています。チョコレートはトップシェア。定番商品が強い製菓事業での安定感もあります。
ただし、2019年5月に明治HDはカールの終売を決定。統合からの課題だったブランドの絞り込みを進めています。

「何でもあるが…」はダメ会社 明治HD社長が「カール」終売を決めた理由|Yahoo!ニュース

ちなみにシェア上位ジャンルを挙げるとチョコレート(1位)、牛乳(1位)、ヨーグルト(1位)、スポーツプロテイン(1位)、流動食(1位)、グミ(1位)…
さらにアイスクリーム(5位)、ナチュラルチーズ(3位)など…
明治より売上が高いメーカーは、ビール会社とJT、日本ハムくらいですが、シェア上位のアイテム数なら食品メーカーの中でも圧倒的ですね。

医薬品事業はMeiji Seikaファルマとワクチン事業のKMバイオロジクスの2社。売上は約1,300億ほど。
近年はやはりジェネリックに注力していく様子。酪農、農業に近いメーカーということもあり、農薬や動物薬も展開しています。

圧倒的ブランドの機能性ヨーグルト

ヨーグルトジャンルではトップの明治ですが、特に機能性ヨーグルト、すなわち”生きて腸まで届く”プロバイオティクスや健康機能をPRしたヨーグルトではシェアを独占しています。
特に、R-1は発売以降大ヒットとなり、1日1本愛用する人も多い商品です。
どちらかというとヨーグルトは薄利多売のローコスト商品ですが、明治は高機能高価格のプロビオシリーズを常備品として定着させることに成功しました。

食品と医薬品研究をベースにしたバックデータも豊富で、ヤクルトと同じく『エビデンスのある健康食品』の地位を確立しています。

これは明治が得意としている乳児用粉乳・ミルク介護用食品にも好影響。健康にナイーブな層に対して『明治なら安心』というイメージは強力なブランディングになります。

ギリシャヨーグルトでは苦戦

ただし、明治もギリシャヨーグルトジャンルでは苦戦中。
森永乳業のギリシャヨーグルト、パルテノは発売から徐々に話題になり、2015年に大ヒット。
ギリシャヨーグルト市場の成長とともに地位を確立させました。今ではこのジャンルで半数のシェアを取り、次点にダノンのOIKOSが付けている状況です。

ギリシャヨーグルトは、ちょっとリッチな高級ヨーグルトという位置付けです。
明治はここでも明治らしく、栄養と健康を押し出して、栄養バランスに優れた濃厚ヨーグルト『バランスランチ』を発売するも大コケ…
現在は『明治 THE GREEK YOGURT』が奮闘していますが、成熟した市場でなかなかシェアを取りきれません。

ギリシャヨーグルト市場の傾向として、高級から高タンパクをPRする戦略にシフトしつつあります。
明治が得意なジャンルでもあるため、巻き返しを図りたいのが明治の本音でしょう。

The Chocolateに見る明治のブランディング戦略

「栄養格差時代」にこそ「おいしい」を、統合から10年で明治の使命とは|BUSINESS INSIDER JAPAN

ギリシャヨーグルトで苦戦中といっても、明治はもともと高級アイテムのブランディングは苦手ではありません。チョコレートでもシェア1位の明治は『THE Chocolate』のヒットも記憶に新しいところ。

覚えやすいシンプルなネーミング、味から見た目まで高級志向で揃え、SNS映えも意識した秀逸なデザイン。一般家庭向けの高級チョコレートはライバル不在のジャンルではありましたが、しっかりとシェア確保を成功させています。

”安定成長”の食品メーカーですが、先鋭的なマーケティング戦略も得意ときたら敵なし。
得意な健康ジャンルに関しても、顔認証による健康状態の診断サービスを開発中とのこと。スポーツや医療用食品とのシナジーも期待できますね。
数少ない自分でマーケットを作っていけるメーカーの1つです。

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おわりに

原料高や薬価改定、日本市場の縮小など、苦境が続く現在の国内マーケット。
その中で、これといった欠点が見当たらないほどのビジネスモデルを展開している明治ホールディングス。
上位の食品メーカー、JTやビール業界、日本ハム(加工肉)のように、扱っている商品にネガティブなイメージが付き始めていることもありません。
ただし、商品のイメージが良いため、一度不祥事を起こしてしまうと(雪印のように)急落してしまうのもこの業界。攻めつつ、守りつつ…これからも日本のマーケットをリードしていくメーカーでしょう。それでは。