食品科学

乳酸菌のプロが本気で『ヤクルトとピルクルの違い』決定版を作ったよ

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大腸は人間の大切な免疫器官。

腸内フローラ、腸活という言葉もメジャーになり、腸が消化だけではなく、体全体の健康を整える免疫器官ということが周知されるようになりました。
僕自身、大学で食品微生物を研究していたこともあり、乳酸菌やヨーグルトに関してはちょっとうるさいですよ。

乳酸菌、腸内環境、ヨーグルトの基礎知識を専門外でもわかるように解説します

ヨーグルト、乳酸菌飲料、発酵乳など『乳酸菌』を摂取できる食べ物、飲み物はたくさん。
僕も昔はカルピスジャンキーでした。今はヤクルトばかり飲んでいます。

ところで…

ヤクルトとピルクル…

どちらも飲んだことありますか?
似た容器に入って、同じような味で、同じ効果…
そう思っている人も多いかもしれません。
ヤクルトのほうがピルクルより高いので、値段でピルクルを選んでいる人も。

では、ヤクルトとピルクルの差はなんでしょうか?

今回は、食品メーカーの中の人として、『ヤクルトとピルクルの違い』を風味、健康効果、企業体質とマーケティングの面から解説していきます!

はじめに:乳酸菌飲料とは

乳酸菌飲料の定義については、下の記事でも解説しています。

多くの人が勘違いしてる『ケフィアとヨーグルト』を専門家が解説するよ!

乳製品は、乳脂肪無脂乳固形分(水と脂肪以外の乳成分)の割合2、そして乳酸菌の有無でカテゴライズされます。
ちなみに牛乳から乳脂肪を回収したのが生クリーム、乳脂肪を除いて乾燥粉末にしたのが脱脂粉乳です。
乳製品は生クリームと脱脂粉乳で乳成分を調整し、開発、製造されます。

さて、ヤクルトとピルクルは乳製品のジャンルとしては『乳製品乳酸菌飲料』になります。
(”乳製品乳酸菌飲料”と”乳酸菌飲料”は違う)
対して、ヨーグルトは『発酵乳』

両者の違いは以下の表をごらんください。

名称 無脂乳固形分 乳酸菌または酵母数
発酵乳 8%以上 1,000万/mL以上
乳製品
乳酸菌飲料
生菌 3%以上 1,000万/mL以上
死菌 なし(殺菌)
乳酸菌飲料 3%未満 1,000万/mL以上

普通の牛乳は無脂乳固形分8.3%脂肪3.5%程度。
牛乳をそのまま乳酸菌で発酵させれば発酵乳(≒ヨーグルト)の規格になります。
固形のヨーグルトをミキサーなどで液状にしたのが飲むヨーグルトです。

表の通り、ヤクルトとピルクルは”乳製品乳酸菌飲料”なので、飲むヨーグルトより乳成分が薄いです。ヨーグルトよりサラサラした舌ざわりなのはそのためです。
ヤクルトとピルクルは水に脱脂粉乳と糖分を加えて乳酸菌で発酵させて作ります。

ちなみに、乳製品乳酸菌飲料(殺菌)にあたるのはカルピス
濃縮液が常温保存できるのは殺菌済みだからです。

乳酸菌量を確保しつつ、さらに乳成分が低いのが『乳酸菌飲料』になります。

 

ヤクルトとピルクルの【成分解析】

ヤクルト(商品名:New!ヤクルト)とピルクルの成分表示がこちら。
これらを表になおすと…

項目 ヤクルト ピルクル
容量 65mL 65mL
エネルギー 50kcal 44kcal
タンパク質 0.8g 0.8g
脂質 0.1g 0.1g
炭水化物 11.5g 9.8g
乳酸菌種 L.カゼイシロタ株 L.カゼイNY1301
乳酸菌量 200億以上 150億以上

あまり変わらない!
さて、難しいですね。

成分で唯一差があるのが炭水化物
ここでの炭水化物は、牛乳(脱脂粉乳)由来の乳糖添加する糖分の合計です。
ヤクルトの方が値が高いので、甘味度を高く調整していることがわかります。
カロリーの差もここから来ていますね。
乳成分に差はありませんでした(無脂乳固形分3.1%、乳脂肪0.1%)

また、どちらも原料はブドウ糖果糖液糖砂糖脱脂粉乳香料の4つです。
これはヤクルトの並びですが、ピルクルではブドウ糖果糖液糖より砂糖が先に書かれています。
原料の並びは重量順なので、ピルクルブドウ糖果糖液糖よりも砂糖の割合が高いことがわかります。
糖の種類は甘さと味に影響します。

他にも乳酸菌の数と菌株が違いますね。
この点については後述します。

 

ヤクルトとピルクルの【風味評価】

成分的にはほぼ同じなので、両者を食レポ…というより研究者らしく風味評価してみました。

試飲日は4月13日です。
どちらも賞味期限に近いですね(セール品だから)

グラフにすると…

ヤクルトの方が少し甘く酸味も強いように感じます。これは成分通りですね。
ピルクルより発酵時間を長めに調整してるのかもしれません。

冷蔵保存でも乳酸菌は生きている=酸を出すため、時間が経つにつれ、生きた乳酸菌を含む乳製品はどんどん酸っぱくなります。
正確には作りたてで評価すべきですね。

ピルクルの方がすっきりしていて飲みやすい印象。
悪く言えば少し薄いですね。
量を飲めるのはピルクルかもしれません。

乳酸菌は株の違いによって、発酵後の風味や酸味が大きく変わります。
そのため、メーカーの開発現場では数十、数百種類にもなる乳酸菌でヨーグルトを試作します。

食品メーカーで商品開発をしている僕に起こった変化10選!

この記事は食品メーカーの開発現場のリアルをまとめています。興味があれば是非。

 

ヤクルトとピルクルの健康効果

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【参考】論文発表 | ヤクルト中央研究所、プロバイオティクス製品搭乗の歴史的背景と期待される今後の展開(2011)、その他学術論文など

超エリート乳酸菌シロタ株の圧倒的研究データ

ヤクルトは(故)代田稔博士がラクトバチラス・カゼイ・シロタ株という乳酸菌の育種に成功したのが起源です。
それ以来、派生商品はあれど、ヤクルトはこの1株に注力して商品開発をしてきました。
それ故のブランド力です。

この株は、正式には、Lactobacillus casei という種類の乳酸菌から、最もエリートの1株を純粋培養し、育て上げたものです。
ちなみに、ピルクルの菌もLactobacillus casei NY1301株という乳酸菌。
同じ種類で違う株ですね。

同じ種類で違う株…

人間もHomo sapiensという種類の生物ですが、頭脳や運動能力に大きな幅があります。
人間でいえば、我々一人一人が『株』です。
微生物の『株』にはこれ以上の差があるのです。
同じ種類でも、食べるものや、環境適応能力がぜんぜん違います。

人間で例えるなら、

『おれは酸素で呼吸するけど、お前は無酸素でも土を食えば生きていけるよね』

くらいの差があったりします。
『株』のバリエーションはハンパないのです。

話を戻しましょう。
ヤクルトのシロタ株で現在解明されている主な健康効果。

まず、機能性ヨーグルトでメジャーな健康効果はカバーしています。
プロバイオティクス、免疫向上、便秘解消、悪玉菌減少、ビフィズス菌増加…
このあたりはヒト試験で豊富なデータが発表されています。

加えて…

  • (マウス)免疫細胞の活性化によるインフルエンザウイルス感染の耐性向上
  • (マウス)ピロリ菌の増殖抑制
  • (細胞)免疫細胞(NK細胞)の活性化によるガン化抑制
  • (細胞)抗腫瘍、腫瘍転移の抑制作用
  • (細胞)シグナル伝達制御による腸管炎症の改善

などが動物実験、細胞レベルで解明されています。
過去に乳酸菌の最前線で研究していた身で言えば『ヤクルトの乳酸菌はガチ』と言いたいところ。
僕は新卒採用でヤクルトに落ちているので、ステマではありません(涙)

ちなみに、カゼイ・シロタ株の関連論文は『医学系』分野が多いのです。
この点については後述しましょう。

 

ピルクルの乳酸菌は『未知数』?

【参考】日清ヨークのカゼイ菌(NY1301株)のひみつ、日本食品化学工学,vol.48,No.9 (2001)など 

ピルクルの乳酸菌カゼイ・NY1301株も、ヤクルト同様、特定保健用食品(トクホ)を満たす機能を発揮します。
トクホについては以下で詳しく解説しています。

10分でわかる保健機能食品の基礎【特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品、栄養機能食品】

ただ、カゼイ・シロタ株と比較すると、健康効果に関するデータが少ないというのが現状です。
健康効果が十分期待できる乳酸菌ですが、シロタ株同等かは、良く言って『未知数』ですかね。

研究に要した時間(歴史)と、企業体質が違うのでしょうがないですが…。

 

【企業体質】で見るヤクルトとピルクル

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実は『超研究系』メーカーのヤクルト

両メーカーの研究費と売上のデータを見てみましょう。
参考として、他食品メーカーのデータ('15)も載せておきます。

企業名 売上高 研究開発費
百万円 百万円 対売上%
ヤクルト 367,890 12,134 3.30
日清ヨーク 431575 6,431 1.49
森永乳業 594,834 4,958 0.83
伊藤園 430,541 1,788 0.42
明治HD 1,161,152 26,015 2.24
味の素 1,006,630 32,228 3.20
キリンHD 2,195,795 57,100 2.60

※各企業の決算短信、有価証券報告書などより

このようにヤクルトの研究開発費は同規模の食品メーカーの中では群を抜く数字です。
売上に対する割合なら、超研究系メーカーである味の素や、大手ビールメーカーすら凌ぐのです。

また、ヤクルトが一線を画すのが、研究開発費の多くをシロタ株を初めとする『乳酸菌』に投入していること。
ヤクルトも医薬品や化粧品に進出していますが、医薬品であれば整腸薬や便秘薬、化粧品であれば乳酸菌の発酵液を用いた保湿剤など、全ての事業が乳酸菌という軸から派生しているのです。

この点は、ヤクルト、及び乳酸菌カゼイ・シロタ株のブランド構築に大きく寄与しています。

 

日清食品ホールディングスと日清ヨーク

対して、ピルクルの製造元である日清ヨーク。
日清グループ(日清シスコとか)の研究開発は、親会社である日清食品HDが担います。

グラフの通り、日清食品HDの研究開発費は約64億円(対売上1.5%)です。
食品メーカーでは十分高いですが、ヤクルトや他の大手メーカーと比較すると少し物足りないですね。
加えて、日清HDでは即席麺、冷凍食品、シリアル、そして発酵乳と扱うジャンルが多岐にわたります。
ピルクル関連に投入する研究費は決して多くありません。

ヤクルトに研究データで大きく劣るのは必然なのです。

 

【マーケティング】で見るヤクルトとピルクル/なぜヤクルトは高いのか

【参考】セグメント情報 | 財務・業績 | IR情報 | ヤクルト本社など

ヤクルトは元々『医薬品』だった!?

代田博士は『予防医学』に役立つ健康効果に特化した乳酸菌としてシロタ株を見出しました。
1930年代の話です。
ヨーグルトや乳酸菌飲料は、今でこそ嗜好品のイメージが強いですが、栄養面衛生環境が劣悪な当時は、食品よりも医薬品としての役割が期待されていました。
これがヤクルトのルーツです。

ヤクルトはこの歴史を海外…特に発展途上国で繰り返しています。

【リンク:ヤクルトは、なぜ新興国市場で強いのか|ダイヤモンド・オンライン

国内市場はシュリンクしつつありますが、ヤクルトの売上の約3割、営業利益の約6〜7割を海外事業が占めています。
海外では完全に『健康食品』としてのブランドを確立しています。
そして、物流・販売網が未熟な途上国では『ヤクルトレディ』という制度は非常に効率的な売り方なのです。

 

ピルクルのコンセプトは安くてゴクゴク飲める『味』

対して、ピルクルの歴史は1993年。
1935年発売開始のヤクルトと比較すると新人です。
成分や菌種からヤクルトを意識していることは間違いありませんが、根本的にコンセプトが違います。

『甘さを抑えてゴクゴク飲めるコクのある乳酸菌飲料』

これがピルクル発売のコンセプトであって、『医薬品』ベースのヤクルトとは向く方向が違います。一番の売りは『味』なのです。

同じ乳酸菌飲料でも、ヤクルトは健康特化です。
対して、ピルクルは量を飲みたい乳酸菌飲料ヘビーユーザー向けの嗜好品です。
もちろんトクホとしての健康効果は忘れてはいけませんが。

両者の価格差もこのコンセプトの差によるもの。
ピルクルは健康効果で勝負せず、安さと味でヤクルトとの差別化を狙ったのです。

 

おわりに

ヤクルトとピルクルの違いを徹底的に解析してみました。
文章の組み立て方でバレるかと思いますが、僕は完全にヤクルト派です。笑

そもそも僕は整腸のためにヤクルトを飲んでるので。
既述の通り目的が違うんですよ。で味もヤクルト派ですが。でもピルクルももちろん美味しいですよ!

皆さんはどちら派でしょうか?
商品選択に少しこの記事が役に立てばうれしいですね。それでは

 

  1. 2つ合わせると”乳固形分”
  2. 2つ合わせると”乳固形分”
  3. 2つ合わせると”乳固形分”
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