食品の五大栄養素…しっかり考えて食べていますか?
エネルギーを作るたんぱく質、脂質、炭水化物…ここまでが三大栄養素と言われます。
ここに『体の調子を整える』と言われるビタミンとミネラルを加えて五大栄養素と呼びます。
体の調子を整えると言ってもパッとこないかもしれません。
無ければ無いで生きていけるのか…?
数十種類のビタミン、ミネラルの効果や重要性を覚えておくのは難しいと思います。
そこで、今回の記事は『ビタミンの基礎知識』がテーマです。情報量が多くなってしまうのでミネラルはまたの機会に。
ビタミン13種類の役割から摂取量、過剰摂取と欠乏症のまとめ、サプリメントの摂り方と栄養成分など…
食生活に必要なエッセンスのみを簡単に解説していきます!
【参考】農林水産省/みんなの食育、厚生労働省/日本人の食事摂取基準、栄養学の基本がまるごとわかる辞典(2015,西東社)、栄養成分表2015、その他学術論文など
ビタミンとミネラルの基礎知識
ビタミンとミネラルの違い
ビタミンもミネラルも『直接エネルギーにはならないが、生物の生存・生育に必要な栄養素』という大きな括りでは同じです。
化学的な話になりますが、炭素を含む化合物である有機物がビタミン、炭素を含まない無機物がミネラルとなります。ミネラルのほとんどは化学的には”金属”に属します。
ビタミンは主に代謝やホルモンバランスに関与しています。
ミネラルは、アクエリとポカリの比較記事でも言及していますが、主に骨格の形成や細胞の浸透圧制御など、身体形成・維持に関与しています。種類ごとの詳しい機能は後の章で羅列していきます。
水溶性、脂溶性のビタミンと吸収効率
ビタミンは大きく分けると、水に溶ける水溶性ビタミン、水に溶けず油に溶ける脂溶性ビタミンの2つに分かれます。
この2つは吸収のメカニズムと、身体内での蓄積性が大きく異なります。
【引用】カラー図解 栄養学の基本がわかる事典
水溶性ビタミンは腸管の表面にから直接、あるいはトランスポーター*1という輸送器官を経て血管へ吸収され、全身の細胞に輸送されます。
吸収されやすい反面、尿に容易に溶解するので体内に蓄積されず、過剰分はすぐに排出されます。そのため、水溶性ビタミンには摂取上限が無い場合が多いですが、サプリメント等で急に過剰摂取すると過剰症が出る可能性があり、そのようなビタミンは上限が設けられています。
このため、継続的に少量ずつ摂取することが望ましいのです。
植物油脂の基礎に関する記事でも書きましたが、脂溶性ビタミンは油分とともに吸収されます。そのため、油分を含む食品とともに摂取すると吸収されやすく、サプリ等で単独で摂取すると吸収率は低くなってしまいます。
脂溶性ビタミンは水溶性ビタミンと違って、肝臓に蓄積されるため、過剰摂取すると身体に悪影響が出る場合があります。種類により、農林水産省が摂取上限量を定めております。
食事摂取基準とは
さて、研究機関で得られたデータを基に厚労省が作成した日本人の食事摂取基準では、栄養素の摂取量を以下のように区別しています。
まず、健康機能の維持に必要な量を充足する『推奨量』
正確な値の策定にはさらなる研究が必要だが、栄養状態の維持に十分と考えられる『目安量』
この2つは研究データの豊富さによる違いであるため、ここではほぼ同じ意味で扱います。
また、過剰摂取による健康障害の回避を目的として『耐容上限量』が定められています。毎日継続して摂取すると過剰症が発症しうる量の目安となります。
適正摂取量は年齢により変わっていきます。
※日本人の食事摂取基準2015よりデータを抽出しグラフ化
赤と青の線が年齢ごとのビタミンAの摂取推奨量を示しています。点線が耐容上限量ですね。
それぞれが健康維持に必要な下限と上限ですから、緑部分が1日あたりの適正な摂取量の目安なります。
それでは、これらの用語を基に、各ビタミンの基礎知識と適正摂取量を見ていきましょう!
ビタミン全種類の基礎知識一覧
この章では以下の表で解説していきます。
上部が過剰摂取時と欠乏時の症状を、下部では各ビタミンの摂取に適した食品例と摂取量(1日あたり)を示しています。文章では表の解説を中心に進めていきますね。
脂溶性ビタミン(4種類)
ビタミンA
単位はレチノール当量(mgRE/日)換算
ビタミンAは類似効果・類似構造を持つ栄養素の総称で、レチノールや色素として有名な『カロテノイド』もビタミンAの一種です。βカロテンやクリプトキサンチンはサプリメント等で聞いたことあると思います。
加熱調理により減少しますが、表内のにんじんやほうれん草の含有量を見てわかるように、加熱済みの緑黄色野菜でも十分摂取できます。
主な効果は目の機能と免疫力の維持です。過剰摂取により頭痛や吐き気を催しますが、これはビタミンAのうち動物質に多いレチノール特有の症状で、緑黄色野菜に多いβカロテンでは過剰症はありません。心配な方は野菜中心にビタミンAを摂取すると良いでしょう。
ビタミンD
ビタミンDは日光(紫外線)に当たることで人体内でも合成可能です。食品では魚類やきのこ、特にきくらげに多く含まれます。
通常の食事では過剰症の心配はほとんどありませんが、サプリメント等で摂りすぎると吐き気や腎機能に悪影響を与える可能性があります。
ビタミンDは血中や組織内のカルシウム濃度の調整を担っており、特に子供では骨の成長、成人では骨粗鬆症の防止に重要です。太陽の下で思いっきり遊ぼう!
ビタミンE
ビタミンEは植物油脂の基礎知識で解説しましたが、いわゆる『抗酸化物質』です*2。
耐容上限がありますが、桁が2つ違うので過剰摂取は無視してOKです。細胞の老化防止に役立つため積極的に摂取していきたいビタミンです。
表には無いですが、植物油にも多く含まれており、油とともに摂取することで特に吸収率が高まるビタミンです。熱に強いですが、大気中で酸化し劣化するので、新鮮な食物から摂取していきましょう。
ビタミンK
ビタミンKも骨の成長に関わっており、骨粗しょう症の治療薬にも使われる栄養素です。
こちらも過剰症の報告は少ないため、上限は設けられていません。ただ、栄養学の専門書を見ると、過剰摂取により血液凝固剤の効果を低減する可能性があると言及されていますので、服用者は医師に相談すると良いでしょう。
腸内環境の基礎でも少し書きましたが、腸内細菌でも少量合成できるものの、それだけでは不十分なので、普段の食事でしっかり摂取していきましょう。
水溶性ビタミン(9種類)
ビタミンB1
ビタミンB1の正式名称はチアミンといいます。熱に弱く、生鮮食材の栄養成分を参考にしたとしても、加熱により半分以上は失われるつもりで計算しましょう。
水溶性ビタミンは水分に溶け出すため、煮物など汁ごと摂取できる調理形態が望ましいです。ビタミンB1に限った話では無いですね。
水溶性ビタミンは全体的に細胞内の様々な酵素を補助する働きをしています*3。
特にビタミンB1は糖分の代謝に不可欠で、ビタミンB1が不足すると糖のエネルギー変換が不十分となります。逆に糖質の過剰摂取はビタミンB1を消耗し、欠乏症を引き起こします。また、血中濃度が一定以下になると脚気を引き起こす可能性があります。
ビタミンB2
ビタミンB2もB1と同様、代謝に不可欠な物質で、正式名称はリボフラビンです。
脂質、糖質、たんぱく質の分解酵素の作用を助けるとともに、 身体の発育を促すので、特に子供には重点的に(適正量を)摂取させたいビタミンです。
動物性食品に多いですが、レバーの含有量が目立ちます。ビタミンAなど、レバーはかなり栄養リッチなのです。
光に弱いので、該当食品は冷暗所で保管しましょう。
ナイアシン
※表中の許容上限はニコチン酸アミドの量
ナイアシンに特徴的な作用として、アセトアルデヒド分解酵素の補助…すなわちアルコールの分解を助け、二日酔いを防止する作用があります。
体内でもトリプトファンというアミノ酸から合成できるので、欠乏症になることはほとんどありません。しかし、習慣的にアルコールを過剰摂取しているとナイアシンが消費され欠乏症に陥る可能性があります。
ビタミンB6
※表中の許容上限はピリドキシンとしての量
ビタミンB6は脂質の蓄積防止に関与する他に、神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の合成に不可欠な栄養素です。そのためホルモンバランスの安定など、精神衛生面でも重要な働きをします。
動物性食品、特に魚類には豊富に含まれています。ビタミンB6も腸内細菌が合成でき、欠乏症の心配はほとんどありません。ただ、抗生物質の使用などで腸内細菌の活性が低下すると、まれに欠乏症を引き起こすので、食事からもしっかり摂取しましょう。
ビタミンB12
ビタミンB12は動物性食品に多く、野菜にはほとんど含まれていないビタミンなので、野菜のみの食事など、過度なダイエットをしている方では欠乏症に陥る可能性があります。
特に血液を作る上で重要な働きをしており、葉酸とともにヘモグロビンの合成に不可欠なビタミンです。そのため、貧血の治療薬にも用いられます。
葉酸
葉酸の重要な働きも造血作用で、ビタミンB12とともに摂取すると有効です。なお、妊娠時の推奨量は480μg(+240)となります。
造血作用だけではなく、アミノ酸や核酸(DNA)といった、細胞で最も重要な成分の合成に必要不可欠なので、細胞分裂が盛んな箇所、盛んな時期に欠乏症になることがあります(≒胎児を持つ母親など)
サプリメント等で急激に過剰摂取した場合は胃腸炎等の過剰症が確認されています。推奨量と上限量の差も大きくないため、適正量を心がけましょう。
パントテン酸
パントテン酸もホルモンバランスの調整に役立ちますが、動物性、植物性多くの食品に含まれているため、絶食しない限り欠乏症に陥ることはまずありえません。
免疫力の強化のためには、他のビタミン、特にビタミンB6や葉酸とともに摂取すると効果的です。
ビオチン
ビオチンは腸内細菌により合成され、抗生物質等の作用で腸内細菌の活性が低下しない限り、欠乏症に陥ることは少ないです。全身の代謝に関わり、筋肉痛の緩和(乳酸除去の促進)にも効果的です。
特徴的な現象として、生卵白に含まれるアビジンというタンパク質と結合し、吸収が阻害されるため、生卵白の大量摂取によりビオチン欠乏症(卵白障害)に陥ることがあります。そういうシチュエーションはまず無いと思いますが。
バイオ系の実験では、この作用を利用してタンパク質の精製に用いることもあります。僕は学生実験で失敗済み!
ビタミンC
ビタミンCの正式名称はL−アスコルビン酸です。
コラーゲンの合成に必須で、肌質の維持に作用します。少なくとも、消化器官で分解されるコラーゲンを直接食べて美肌効果(笑)を狙うよりは、ビタミンCを適正量摂取した方が効果的です。 抗酸化物質でもあるため、細胞の老化防止など、身体の調子を整えるために重要なビタミンです。
過剰症の項目ですが、ヤバいサプリ等によってグラム単位で毎日摂取した場合であり、日常生活では心配ありません。
なお、ストレスと喫煙によって大量に消費されるので、その場合はより多く摂取する必要があります。
サプリメントからのビタミン摂取
ビタミンをサプリメントで補給している人も多いですが、ここで一度摂取量と主要食品の含有量を比較して欲しいのです。
ビタミンAであればレバーや緑黄色野菜、ビタミンKであれば納豆など、ビタミンは、一般的な食品を適量摂取するだけで1日の摂取量を満たしてしまう場合が多いのです。
すなわち、栄養を考えて多品目の野菜・海産物を毎日食べられていれば、ビタミンが欠乏することはありえないのです。
しかし食生活がどうしても偏ってしまう事情があるかもしれません。
その場合は、不足しているビタミンのみ必要分だけサプリで補給すればOKと言えるでしょう。
記述の通り、ビタミンB1は糖分の過剰摂取、ナイアシンはアルコール、ビタミンCはストレスと喫煙により、不足しやすいビタミンです。
(過剰摂取しない前提で)無難にマルチビタミンで良いと思いますが、正直DHCやネイチャーメイド等、一般的なマルチビタミンサプリならどれでも良いと思います。
(アメリカ製だとたまに異常な量が入っていることがあるので注意!)
一応、両サプリの推奨摂取量に対する充足率を調べておいたので、参考までに。
ビタミンEとビタミンCに過剰症の心配はほとんど無いですし、若干ネイチャーメイドの方がバランスが良さそうですかね。まぁ、味の好み?等で選べば良いのではないでしょうか。
最近は様々な理由で食生活が乱れている人が多いと思います。
自身の食生活を振り返り、サプリメントはその名の通りsupplement:不足分を補うために使用しましょう。サプリ主食はダメ、ゼッタイ。
なお、脂溶性ビタミンは油分とともに摂取しないと吸収率が落ちますし、水溶性ビタミンも単品だと吸収率を最大化できません。
食事とともに吸収させるため、食後に摂取するのが望ましいでしょう。
おわりに
ビタミンの基礎知識を、各ビタミンの摂取量とともに解説していきました。
とはいえ、野菜、魚介類、動物性食品…バランスよく食生活を送っていれば心配無用です。
心当たりのある方は、心身の不調が食生活から来ていないか、食事と栄養成分を一度見直してみましょう。
僕も最近魚を食べることが少ないような…見直さねば。
ミネラルの基礎知識はまたそのうち。それでは。
みるおか
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