【明治&森永&雪印】日本3大乳業メーカー+αを事業比較してみた

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日本の大手乳業メーカーといえば明治乳業、森永乳業、雪印メグミルク。
乳製品という軸で括れば、ヤクルトを入れて4大乳製品メーカーと言えるかもしれません。
その下にグリコや六甲バター、タカナシ乳業、オハヨー乳業、小岩井乳業などが続きますが、売上や人気、知名度を考えれば、明治がトップ、森永、雪印が二番手を争っている状況です。

では、この4社は他のメーカーとは何が違って、なぜ人気なのか。この記事では、各社の売上や事業を比較しながら企業レポートを作っていきます。

『あの乳業メーカーは実はこんな企業!』

興味のある人はぜひお読みください。

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世界と日本の乳業メーカー売上ランキング

オランダの金融機関Rabobankが毎年公開している世界の乳業メーカー売上ランキング。
2018年のTop20(Global Dairy Top 20 2018)はこのようになっています。

順位企業名(順位変動)売上
(10億US$)
1ネスレスイス24.1
2ラクタリス(↑1)フランス19.9
3ダノン(↓1)フランス17.6
4デイリーファーマーズアメリカ14.7
5フォンテラ(↑1)ニュージーランド13.7
6フリースランド・カンピーナ(↓1)オランダ13.6
7アーラフーズデンマーク11.7
8サプート(↑1)カナダ10.8
9伊利集団(↓1)中国9.9
10蒙牛乳業中国8.8
11ディーンフーズアメリカ7.5
12ユニリーバオランダ7.0
13DMK(↑1)ドイツ6.5
14クラフトハインツ(↓2)アメリカ6.2
15明治HD(↓2)日本5.8
16ソディアールフランス5.8
17サベンシア(↑1)フランス5.5
18ミューラー(↑1)ドイツ5.1
19アグロプール(↑1)カナダ5.1
20シュレイバー・フーズ(↓3)アメリカ5.0

(出典:Global Dairy Top 20 2018|Rabobank から翻訳)

世界のTop20に入っている日本の乳業メーカーは残念ながら明治ホールディングスのみ。決算短信を見ると総売上約1.25兆円のうち、乳製品が5,400億円ほどを占めています。。
日本ではお菓子のイメージが強いネスレですが、世界的には乳製品のトップメーカー。
ユニリーバやダノンも日本に進出して長い企業ですね。ユニリーバは日本では洗剤やヘアケアのイメージが強いですが、こちらも世界では食品メーカーのイメージが強い企業。外資系メーカーは日本の市場に合わせて投入する商品群を絞る傾向にあります。

次は日本の乳業メーカーにフォーカスしていきましょう。
直近の乳製品、乳酸菌飲料を扱う食品メーカーの売上をまとめてみました。

順位企業名売上(億円)
1明治ホールディングス12,485
2雪印メグミルク5,961
3森永乳業5,920
4ヤクルト本社4,015
5江崎グリコ3,534
6よつば乳業1,051
7タカナシ乳業957

(参考:各社決算短信|2019.5時点での最新)

カルピスを扱うアサヒホールディングス(アサヒ飲料)を含めるとトップが変わってしまいますが、やはり明治が圧倒的。雪印、森永がその次を争う状況です。
ただし、明治は製菓事業も含む売上のため、乳業メーカーとしての売上は3社ほぼ横並びと言えます。

その下には乳酸菌飲料のヤクルト、そして2015年に旧グリコ乳業を吸収した江崎グリコが続きます。
ただし、生乳加工から乳製品までカバーする純粋な『乳業メーカー』としては第4位がよつ葉乳業となります。業務用メインのBtoBメーカーの色が強く、知名度はあまり高くありませんが、各乳業メーカーにとっては脱脂粉乳などの乳原料供給元としても欠かせない企業。安定感で言えば大手4社を凌ぐレベルです。
これ以下は競争が激化!タカナシや小岩井、オハヨー、ダノンや日本ルナなどが限られた店頭の棚を争っています。

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乳製品メーカー5社の企業比較

ここからは3大乳業メーカー、そして注目すべき中堅メーカーの事業を比較していきます。

【参考】食品新聞IR・投資家情報|明治ホールディングスIR情報|森永乳業IR|雪印乳業など

 

明治乳業|圧倒的トップだが新製品開発に苦戦か

明治ホールディングスはここ数年売上高が1.2兆円強、株価やROEもほぼ横ばいで推移しており、堅固な地位を築いています。
海外売上比率は10%ほどですが、経営計画では2026年に20%まで伸ばす方針を掲げています。

事業の広さやブランド価値を考えれば、不祥事でも起こさない限り、乳製品トップの地位は揺るがないでしょう。
食品メーカーは需要が絶えず、就活生にとっては”安定感”が人気につながっている業界。その中でも明治ほど”安定成長”が期待できるメーカーはそうありません。乳業メーカーの王様です。

製品のブランド価値も高く、明治ブルガリアヨーグルト、機能性ヨーグルトのR-1、牛乳では明治おいしい牛乳。この3ブランドを断る小売店はありません。

特に機能性ヨーグルトは一人勝ち状態!
ブルガリアヨーグルトという圧倒的ブランドに加え、インフルエンザの時期に販売量が爆上がりするというR-1。その系譜を継ぐLG-21、PA-3。機能性ヨーグルトだけで約1,100億の売上げです(2018年度)。

明治は医薬品事業も展開しているため、研究開発でもシナジーを生みながら健康機能のバックデータを増やせます。このスタイルはヤクルトも同じですが、明治は乳製品だけではなく、菓子や加工食品、乳児用食品など、さらに広い応用範囲が強み。

ただし、新製品開発では苦戦しているのが現状です。
特に森永乳業のパルテノ、ダノンのOIKOSが独占するギリシャヨーグルト市場では人気商品を出せていません。
ギリシャヨーグルトに再チャレンジした『明治 THE GREEK YOGURT』が善戦していますが、2社の地位を脅かすほどではありません。

ヨーグルトはイメージと広告露出が売上に直結する商品です。
経営計画では”コア事業に注力”とありますが、伸びているギリシャヨーグルト市場にしっかりと広告費、開発費を使えるかが課題の1つでしょう。あるいは機能性ヨーグルトに特化していくのか…

とはいえ、2010年にホールディングス化してから、菓子から乳製品、スポーツ飲料、介護食と幅広い事業がいずれもシェア上位を維持。最近話題の液体ミルクなども早い段階でマーケットに投入しています。
BtoCにおいては、最も日本の食卓に貢献している企業の1つと言えるでしょう。
製品群がいずれも『健康』に良いイメージであることも明治のブランド力を高めています。
明治HDより上位の食品メーカーはJT、ビール大手、日本ハムとなりますが、これらの企業のメイン商品(タバコ、酒類、加工肉)は日本では逆風にあり、いずれも海外へ目を向けていますからね。

乳業メーカーの枠を超え、総合力トップの食品メーカーと言っても過言ではありません。

【明治乳業をもっと詳しく!】【企業研究】5分でわかる明治ホールディングス株式会社のビジネスモデル

 

森永乳業|パルテノでギリシャヨーグルトの地位を確保

乳業第2位を雪印メグミルクと争っている森永乳業。売上規模はどちらも6,000億円に迫ります。

ビヒダスや森永アロエヨーグルトなど、これまでも人気商品を抱えていましたが、長年『明治の次』というイメージを崩せませんでした。
そこを切り拓いたのが大人気のギリシャヨーグルトであるパルテノ
このジャンルの先駆けとなったとともに、2015年に発売したソース入りパルテノが大ヒット!この頃からギリシャヨーグルトの知名度も伸び始め、現在は100億円ほどの規模と見られるマーケットで森永乳業が半数を売り上げています。

ちなみに森永乳業は甘酒トップシェアの企業でもあります。
マイナーなイメージの甘酒ですが、250億円ほどの市場規模があり、栄養面(豊富な食物繊維、アミノ酸など)から女性からの注目度が上がっています。

また、森永はBtoB事業にも力を入れており、業務用のアイスやチーズ、ラクトフェリンといった機能性素材を展開。中期経営計画を見ると、利益率の高いBtoB事業を1,000億円規模まで拡大していく方針を掲げています。

ニッチ、かつ影響力のあるジャンルにピンポイントで人気商品を指していく開発力、マーケティング力が森永乳業の強みですね。

 

雪印メグミルク|不祥事の色が消えつつある堅実企業

2000年の集団食中毒、2002年の牛肉産地偽装により解体となった旧雪印乳業。
救済後、2009年に雪印メグミルクとして日本ミルクコミュニティ(メグミルク)と経営統合するまでは厳しい経営が続きます。

以降はブランドの地位を復権!
余談ですが、新卒の面接では不祥事や食品偽装に対する思想を突っ込まれた同期が多かったですね。それだけコンプライアンスに対して厳しいメーカーに生まれ変わったということでしょう。私は書類で落ちましたが。

牛乳やヨーグルトでは明治、森永に劣りますが、市販用&業務用チーズを始めとした優れた乳加工品のラインナップが強み。
雪印コーヒーさけるチーズ6Pチーズ雪印バターなど、人気アイテムを多数持っています。乳糖をカットしたお腹に優しいアカディも根強い人気。
不祥事で失ったDoleの販売権も、現在はジュースのみですが復活しています。

中期経営計画を見ると、注力していくのは機能性素材や特保商品に加えて、やはりチーズ事業。
また、雪印乳業は種苗事業への取り組みや、酪農生産への貢献、生産体制の効率化・コストダウン、そして事業拡大と、酪農から乳加工、そして販売までを1つのポートフォリオと捉えています。
商品開発や機能性素材、新領域へのイノベーションなど、下流にフォーカスしている明治、森永の経営計画とは明らかな違いが見られます。

雪印メグミルクは、酪農をベースに最も『乳業』を体現しているメーカーと言えるでしょう。

 

その他の乳業メーカー

3大乳業メーカーには入っていませんが、乳酸菌飲料を扱うカルピス(アサヒ飲料)とヤクルトを忘れてはいけないでしょう。
特に乳酸菌研究に強いヤクルト食品メーカートップクラスの研究開発費(売上比率)が特徴です。

企業名売上(億円)研究費(億円)比率 %
明治HD12,4852612.2
雪印メグミルク5,961390.7
森永乳業5,920540.9
ヤクルト3,9041273.2
アサヒHD20,8491170.6
武田薬品17,7053,25418.4
第一三共9,2972,03722.0

(参考:各社決算短信または有価証券報告書|2019.5時点での最新)

明治HDを超えて売上に占める研究開発費は乳製品メーカーでトップ。明治とヤクルトの高さが目につきますが、どちらも医薬品を展開しているという共通点がありますね。
大手製薬メーカーは研究費が20%近くになり、明治、ヤクルトも製薬事業には多くの研究費を投じます。その研究成果を食品にも応用できることが大きなアドバンテージですね。ヤクルトが国内、海外で健康機能に特化した乳酸菌飲料をブランド化できている理由です。

【ヤクルトをもっと詳しく!】【企業研究】5分でわかる株式会社ヤクルト本社のビジネスモデル

乳業4位のよつ葉乳業は北海道の農協(ホクレン)の関連法人。もともと”北海道の酪農発展”がルーツにあるため、北海道では圧倒的な知名度、ブランドを誇ります。
雪印メグミルクよりもさらに”第六次産業”のカラーが強い企業ですね。
地元酪農家とも結びつきも強く、北海道の酪農が続く限り安泰なメーカーですが、バックのホクレンがバターの需給、価格操作とも言える発言で炎上したり、やや消費者の感覚とズレがあるのが懸念材料。しかし、とにかく安定供給が求められる業務用がメインビジネス(脱脂粉乳ではトップシェア)であるため、ホクレンと地元農家に支えられた事業形態は他社には真似できません。

他には低温殺菌牛乳のタカナシ、生乳ヨーグルトの小岩井、OIKOS・ダノンビオのダノンジャパン、バニラヨーグルトの日本ルナ、ホームランバーの協同乳業に六甲バターなど、それぞれ尖った人気商品を展開しています。
ここ数年で勢いがあるのはオハヨー乳業。セブンイレブンのPBを獲得し、カップ型のフルーツ入り飲むヨーグルトで地位を確立しつつあります。
またヤスダヨーグルト、カフェオレの高千穂牧場などは、地方の農場からブランド化し、大手を凌ぐ人気商品の開発に成功しています。

 

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終わりに

乳業メーカーに関わらず、消費サイクルが早い食品んメーカーでは、『人気ブランドを1つ持てるか』がサバイバル戦略を左右します。1日のサイクルに入りやすいだけに、顧客の中で”定番”が決まるとなかなか動きません。
定番以外のアイテムでは、日配品の棚割りは変わりやすく、売れなければ即取扱終了の世界。
明治ですら新商品を切られる中で、確実に売れ続けるアイテムを開発しなければいけません。
また、乳製品は衛生面のリスクも高い食品です。商品開発、マーケ、品質保証に求められるレベルが非常に高いシビアな業界なのです。

その中でも明治、森永、雪印は日本の乳製品のフラッグシップとなるメーカーです。
明治を軸に、森永が高級デザート、雪印が乳加工品、ニッチを他メーカーが埋めていく構図がどうなっていくのか…今後も注目ですね。それでは。