『ご飯が美味い!』
これ以上の幸せがありますか?
筆者は3大欲求ではまちがいなく食欲が1番!
ただ、今でこそ美味しいご飯を毎日食べられていますが、以前の会社では激務とパワハラにより、精神をだいぶやられていました。
朝は少しでも寝ていたいから食べず…
昼食も仕事が忙しいので食堂で急いで食べて…
疲れて帰った後の夕食はテンションが上がらず…
『なんか…ご飯、美味しくないな…』
そう思いながら毎日を過ごしていました。
今ではホワイト企業に転職でき、食欲も回復して、12kgも太ることができました!(泣)
体型はさておき、ストレスMAXで毎日が辛かった頃と比べ、今は味の感じ方が全然違うんですよね。
美味しいご飯があれば人生は幸せです。
そこで、今回はストレスや鬱との関係を中心に、味覚障害について解説していきます!
各項目できるだけシンプルにまとめていきますので、味の感じ方に違和感を感じた方は是非ご覧ください。
味覚の基礎知識
味覚を構成する『5つの基本味』
味は以下の5つの要素で構成されています。
まずは『甘味』
いわゆるお砂糖の味ですね。
糖質だけではなく、アミノ酸や有機溶媒(!)にも甘味物質はあります。
舌のが甘味を認識できる物質は数え切れません
ちなみに、名探偵コナンで重宝されている”クロロホルム”の甘味度は、砂糖の30〜40倍と言われていますよ。
人工甘味料など、化学反応でも再現しやすい味覚です。
次は『塩味』
食塩(塩化ナトリウム)の味で”えんみ”と読みます。
食塩が水に溶けると、”ナトリウムイオン”と”塩化物イオン”に分かれます。
甘味はさまざまな物質が関わりますが、塩味は主にこの2つの物質が構成しています。
人間は感じられる塩味は1〜2%程度。
それ以下だと塩味を感じにくく、逆にこれを超えるとしょっぱすぎて受け付けません。
人により感度はそれぞれですが、五味のうち、舌が最も敏感に感じ取れるのが塩味です。
3つめは『酸味』
塩味や甘味と違った特徴があります。
酸の強度は”pH(ペーハー、ピーエイチ)”で表し、pHが低いほど酸が強くなります。
pHは1〜14の範囲内で、中性が7。
酸味を感じるのはおおよそpH4以下です。
ちなみにレモン果汁はpH2〜3、りんごはpH4ほどです。ほとんどの果物は酸性食品ですね。
4つめが『苦味』
お茶に含まれるタンニンや、コーヒーや栄養ドリンクに含まれるカフェインから感じられます。
苦味物質は酸味の対極でもあります。
pHが高い、すなわちアルカリ性だと苦味を感じやすくなります。
最後が『旨味』
日本人が見つけた味覚です。
これについては、酵母エキスの解説記事で詳しく解説しています。
これ以外に、味覚のサブカテゴリとして”辛味”や”渋み”、”コク”などが挙げられます。
『舌』の機能
舌の先の細胞にある”味蕾”という器官が味覚物質を完治し、味覚として脳に伝えます。
味蕾の感じ方や数は人それぞれ違いますし、加齢や喫煙でも機能が衰えます。
”おいしい”の感じ方も人それぞれですよね。
味蕾だけではなく、普段の食生活なども影響します。
『舌には甘味、酸味等を感じる場所が分かれてる』という説がありました。
しかし、最近の研究では『舌の場所によって、それぞれの味の感度に差は無い』というのが定説です。
五味を感じる場所が分かれているのではなく、味全体を感じやすい場所が舌の中で点在しているのです。
味覚障害の種類
ここからが本題ですね。
味覚障害は主に下の5種類です!
- 味覚減退、消失:味の感じ方が鈍くなる。
- 異味症:本来の味と違う味を感じる
- 悪味症:何を食べても不味くなる。
- 解離性味覚障害:特定の味、例えば甘味だけ感じなくなる。
- 自発性異常味覚:何も食べていないのに味を感じる。
それぞれ、加齢やストレス、栄養不足、喫煙…など様々な原因が考えられます。
味覚障害の原因については以下で解説します。
味覚障害の原因
味覚障害の主な原因は下の4点。
特に、ストレスやうつに関係する項目は【!】がついてる見出しをご覧ください。
【!】栄養不足(亜鉛不足)による味覚障害
味覚に影響するミネラルと言えば『亜鉛』です。
多くの学術論文で報告されていますが、亜鉛が関わっているのは、味覚そのものより、細胞の新陳代謝というのが定説です。
亜鉛不足になると、細胞の入れ替わりが停滞しがちです。
舌の細胞も新陳代謝が良くないと機能が衰えていくんですね。
亜鉛は薬剤やアルコール摂取によっても失われますが。
それ以外にも、細胞に負荷がかかる時には亜鉛を消費されるということを覚えておきましょう。
ここでの負荷とは喫煙や飲酒、そしてストレスです。
ストレス下ではどんどん亜鉛は減っていき、味覚障害につながりやすいのです。
ストレスから解放されるのが一番ですが、多くのビタミン、ミネラルは食生活やサプリメントなどから補えます。
亜鉛の適正摂取量は1日に3〜40mg程度です。
消費される分も考慮して、調整していきましょう。
ビタミン全種類の基礎知識まとめ【過剰摂取、欠乏症からサプリメントまで】
上のディアナチュラは亜鉛14mgのタブレット。”補助”としては程よい量ですね。
しかし、海外のサプリには亜鉛500mgカプセルなども存在します。
内臓的への負担が大きいので、適正摂取を心がけましょう!
【!】薬剤による味覚障害
【参考記事】味覚障害のアドバイス|一般社団法人 宮城県薬剤師会、副作用疾患別対応マニュアル 薬物性味覚障害(厚労省)
僕は一時期、睡眠薬代わりに精神安定剤(メイラックス)を飲んでいたのですが、これにも味覚障害が副作用として挙げられています。
心因性の味覚障害(後述)に対しては回復効果が見られる、と言われているので、どちらが優勢になるかは人それぞれですが…
薬剤による味覚障害も、亜鉛が関係します。
一部の医薬品には、亜鉛の吸収阻害や、利尿作用による亜鉛排出の促進という副作用もあります。
その結果、味覚障害につながることが多いのです。
亜鉛は本当に大事なんですね…
舌の傷み、病気による味覚障害
喫煙や刺激物によって舌が傷ついたり、加齢によって味蕾の感度が落ちることがあります。
特に怖いのは”脳出血”や”脳梗塞”による味覚障害。
味覚も脳が支配する感覚なので、脳の味覚中枢が逝ってしまえばそれまでです…
【!】心因性の味覚障害
これもストレス、鬱が関わってくるところです。
メジャーな原因はストレスによる唾液の分泌低下ですね。
口内が潤っているほど、物質は拡散しやすく、舌の細胞にも届きやすいですからね!
乾燥状態では細胞も働きにくいです。
現代病…
最近は
『濃い味に慣れすぎて……』
って人も多いですね。
筆者は食品メーカーに勤めているので、業務上で味見(官能評価と言います)をする機会があります。
そのため、定期的に練習してますし、社内で試験もあります。
めちゃくちゃ薄い濃度の”基本五味”の液体を見分ける試験や、濃度差順に並び替える試験など…
落ちると開発担当から外されることもあるから大変ですよ。
濃い味に慣れてしまうと、薄い味が物足りなくなり、感度が鈍くなります。
塩、砂糖が多い食べ物は美味しいですが、健康的なレシピを考えていきましょう。
対策と治療法
味覚障害って病気なの?
記述の通り、味覚障害にもさまざまな種類、原因があります。
原因によって受診すべき科が違ってくるので気をつけましょう!
主な治療法
まず、受診すべきは『耳鼻咽喉科』
意外かもしれませんが、耳鼻咽喉科では味覚障害のテストなども受けられる病院もあります。
事前に味覚障害を診てもらえるか確認してみましょう。
ストレス、うつが原因の場合は『心療内科』『精神科』の先生と連携して治療することになります。
処方される薬の量によっては、味覚に影響を与えないこともありますし、亜鉛のサプリや食事によって改善できることもあります。
味覚異常のための漢方もありますが、漢方は扱いが難しいため、医師と相談しながら慎重に判断しましょう。
味覚障害とストレス・鬱の対策まとめ
精神的なストレスが引き起こす味覚障害のキーワードをまとめると、
- 医薬品の副作用
- ストレスによる唾液分泌低下
- 亜鉛の欠乏症
です。
ストレスや薬の副作用などが亜鉛の欠乏に繋がり、味覚障害を引き起こすというストーリーです。
こう見ると味覚もストレスチェックの重要な指標になりますね。
日々のストレスと栄養摂取に気をつけて、大事になる前に対処していきましょう!
【食品科学のおすすめ記事!】
成分比較で食品の正しい知識を知りたい人はこちら
- アクエリアスとポカリスエットの違い決定版!成分,浸透圧,代謝まで徹底解説!
- 乳酸菌のプロが本気で『ヤクルトとピルクルの違い』決定版を作ったよ
- 『牛乳、ヨーグルト、チーズの違い』を栄養と健康面から解説してみる
- 多くの人が勘違いしてる『ケフィアとヨーグルト』を専門家が解説するよ!
健康と栄養について知りたい人はこちら
- 【注目】乳酸菌、腸内環境、ヨーグルトの基礎知識を専門外でもわかるように解説します
- プロが比較解説!料理をするなら絶対知っておくべき植物油脂の基礎知識
- 明治R-1ヨーグルトの健康効果と作用機序を乳酸菌のプロが解説するよ!
- 10分でわかる保健機能食品の基礎【特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品、栄養機能食品】
- 図解で簡単!専門家が『食物繊維の機能と便秘解消』を解説するよ!
【この記事の主な参考文献、参考HPはこちら】
公益財団法人塩事業センター
味覚ステーション~世界一面白く食品・栄養・味覚を学べるサイト~
CiNii 論文 – 亜鉛欠乏による味覚障害ラットの味蕾細胞の turnover について
サプリメント大学 | 成分情報満載のサプリ
味覚障害のアドバイス|一般社団法人 宮城県薬剤師会
コメント
はじめまして。
最近食事の味がしなく、食欲が落ちに落ちて困っていたところ、この記事を発見し、とても参考になりましたのでコメントさせていただきます。
心療内科に通い初めて半年ほどになりますが、精神安定と便通改善のため、メイラックス他数種類の薬を処方されています。まさかメイラックスが食欲減退の一端を担っているとは思いもしませんでした。
しかし服薬をやめることもまだできそうにないので、母親がよく服用している亜鉛のサプリメントを自分も使用してみようと思います。
この記事を発見できてよかったです。ありがとうございます。
宮川 (id:watashi711)さん
コメントありがとうございます。
医者ではないので偉そうなことは言えませんが、個人差が大きい症状だと思います。副作用にしても。
何かヒントになったなら幸いです。お大事に。
[…] 出典:https://www.recomtank.com/entry/dysgeusia […]