品質管理（QC）と品質保証（QA）の違いと仕事内容まとめ

メーカー品質保証部。メーカー品質管理部。
どんなイメージを抱くでしょうか？

お堅い、出荷検査、法律、監査、書類仕事、クレーム対応…
いわゆる”花形部署”と違い、地味なイメージかもしれません。
技術系の新卒採用を担当していたことがありますが『第一志望は品質保証部です！』という学生には会ったことがありません（苦笑

そもそも品質保証（QA）と品質管理（QC）の区別がつかない人も。
新卒で配属された学生や、転職エージェントからQA・QC案件を紹介された人は『どんな仕事をするんだろう』とイメージできないかもしれません。

そこで今回は、品質保証（QA：Quality Assurance）と品質管理（QC：Quality Control）の違いについてまとめつつ、どんなキャリアプランがあるのか、将来性や就活、転職での強みまで解説していきます。

品質保証と品質管理の仕事内容

”品質管理は品質保証の下位部門”

こう捉える人が多いですが、リアルは”半分正解”といったところ。
正確には業務範囲が違うのですが、実際は品質保証部の中に品質管理部門が設置されているメーカーが多いです。広義には品質管理は品質保証の一部になりますね。

品質保証の仕事は品質に関するシステム作りやマネジメントです。
品質管理は、そのシステムを守り、品質の悪い商品を外に出さないように検査、分析を行うのが仕事です。
違いは業務範囲と書きましたが、品質保証は原料や開発プロセス、出荷、購入後まで全体をケアするのに対し、品質管理は製品1つにフォーカスするため仕事のアプローチは正反対と言えます。

 この部分を少し詳しく掘り下げていきましょう。

品質管理（QC）の仕事内容

品質管理の仕事は『正常な製品のみを流通させ、不良品を確実に除外すること』です。
そのため、スタッフクラスは製品スペックに沿った実験やデータ分析、出荷許可までが仕事です。実験室での仕事がメインになるでしょう。
ただし、リーダー、マネージャークラスは、ライントラブルや不良品発生の分析や解決まで求められます。製造業に限らず、ITやサービス業でも『バグ発生率』や『クレーム数』などを対象にデータ分を実施します。

メーカーでの品質管理では基本的にQC7つ道具（特性要因図、パレート図、グラフ・管理図、チェックシート、散布図、階層、ヒストグラム）という統計に基づいた工程分析を進めます。
さらに原因＆現状分析を進化させた新QC7つ道具（親和図、連関図、系統図、マトリックス図、アローダイアグラム、PDPC、マトリックスデータ解析）なども用いられます。
モトローラ社が開発したシックスシグマも有名ですね。シックスシグマは経営にも応用されるハイレベルなアプローチです。

画像出典：ITパスポート「絶対合格」のポイント講座(7) 第2部 経営戦略 – 問題発見と発想のための技法 | マイナビニュース
QC7つ道具の一覧。新QC7つ道具と比べて定量的なアプローチが多い。 また、最近では品質管理にAIの活用事例も見られている。AIによる意思決定では、客観的な判断によって捏造やデータ改ざんなどのリスクを減らすことが期待される。

ここで大切なのはQuality（品質）のチェックだけではなく、あくまでもControl（管理）するという意識。 ただ数値を見て”OK・NG”を判断するだけならエクセルやAIで済む話ですよね。
事実、品質管理の現場でもオートメーションはどんどん進んでいます。

そのため、現代の品質管理職では、製造データだけではなく、人の動線や作業性、ミスやトラブルの原因究明、改善案の策定から現場指導まで課題解決スキルも求められます。

品質保証（QC）の仕事内容

品質保証の仕事は『安全で高品質な製品が作られるシステムを作り、マネジメントすること』です。品質に関する社内コンサルタントの役割ですね。
品質管理は工場が仕事場ですが、品質保証では原料調達から顧客対応まで、あらゆるプロセスに関わります。

特に現代の製造業は監査社会です。
GMP（医薬）やHACCP、FSSC 22000（食品）、ISOなど国際規格が定められており、認定工場として合格できなければ取引にも関わります。 監査対応は、品質保証部が最も神経を使うシーンかもしれません。

例えば、食品メーカーで義務化されたHACCP管理だと、以下のようなシステムを工場に導入していきます。書類作成からチーム作成、内部監査、モニタリングまで、品質保証部がリーダーとなって進めていきます。

出典：HACCPとは?｜農林水産省
HACCPのルーツは1960年代に米国で開発された食品の衛生管理方式。ワールドスタンダートとなり、日本でも2018年に義務化された。 HACCPに加え、ISOやFSSCなどの衛生規格に認定されていない企業とは取引しない小売店も増えており、メーカーにとって品質保証の重要性は増している。

システムを作って運用を始めたら終わりではありません。毎年改善してくためマネジメントも求められます。
流通から製品開発、工場、顧客まで、人や部署を動かさないと仕事になりませんから、より高いコミュニケーション能力が必要です。  

品質管理、品質保証のキャリアプラン

品質管理（QC）のキャリアは３段階に分かれる

品質管理職のレベルは、

1. 検査業務が中心のスタッフ
2. 製造データやリスクを分析するリーダー
3. 出荷やトラブル時の判断に責任を持つマネージャー

に分けられます。
スタッフクラスはマニュアルを守り、正しく製品を検査することが仕事です。
高い精度でミスのない仕事が求められるため、几帳面な人が向いています。
ただ、自動化による人員削減が進んでいる職種でもあり、スタッフレベルだと非正規や待遇面で恵まれない求人が多いのも現状です。

リーダー、マネージャークラスではスキルや知識が求められます。
統計学やQCの基本手法（7つ道具）を使って工程改善までアプローチできると上等！
中途採用ではこのレベルからキャリアアップが望めるようになります。
マネージャーレベルでは、製品の出荷権限を持つため、責任とともに年収も上がっていきます。

品質保証（QA）のキャリアプラン

品質保証（QA職）に求められるスキルは業界ごとに異なりますが、基本は『法規』『監査対応』『顧客対応』の知識、スキルが評価されます。

QA職は国際規格（ISOなど）に精通していることが求められますが、自動車業界（トヨタや日産）や、外資系トップメーカー（ネスレやユニリーバなど）では独自の品質規格を設けることがあります。メーカー独自の基準が国際規格として採用されることも。
こういった企業に就職・転職するなら、入社後にゼロから学び直す覚悟が必要です。

法規や国際規格などは、一度身につければ業界全体で通用します。
そのため、しっかり知識を身につければ、他の職種よりも他社で通用する人材になりやすい職種です。
これは品質保証職としてキャリアアップを目指すなら大きなメリット。
特に監査や規格対応は年々厳しくなっており、品質保証をマネジメントできる人材は貴重！
人材も不足しているので需要も高く、将来キャリアを失うリスクも少ないです。
その代わり、社内外を巻き込むコミュニケーション、マネジメント能力が求められます。さらに、常に新しい情報をインプットし続けられる人が向いていますね。

おわりに

とにかく納期通りに商品が欲しい営業。
生産性を上げたい工場。
対して、出荷を取り締まる品質保証や品質管理は、ビジネスのスピードを下げる厄介者と思われることもあります。

しかし、メーカーが高品質な製品やサービスを届けるためにカギとなるのが品質保証と品質管理。この２部門が機能していない企業では、異物混入や不良品、不祥事など、企業の信頼が揺らぐリスクがとても高くなります。
市場が小さくなり、製造コストや人員削減やの圧力が高まる中で、どんどん品質を落としていくメーカーも少なくありません。

QA/QCは間接部門。社内コンセンサスを取るのに苦労することも多いでしょう。
ただ、品質部門の立場が弱い企業、機能していない企業はクレームだけではなく、リコールや不祥事にも直結します。品質部門に不適切なプレッシャーがかかれば、データ捏造などにもつながります。

品質は工場とQA、QCだけの問題だけではありません。
営業から研究開発、マーケティングなど企業全体で取り組むべき課題です。
品質のボスとして、厳しく客観的な目を持った人材が増えてほしいですね。それでは。