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大学生一人暮らし、月13万円の仕送りは『妥当』。根底にある問題とは。

その他学問 コラム
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つい先日、Twitterで軽く炎上した案件がありました。

発端はとある大学生のパンフレットを無断転載したものです。
大学生の氏名と写真が数万人に拡散されていました。

  • 大学生は上京して一人暮らし
  • 月に13万円の仕送りをもらっている
  • 『甘えない環境に身を置きたかった』のフレーズに発狂している人多数

というのがダイジェスト。

個人的には『まぁそんなもんでは?』という感じで気にも留めませんでしたが、全体的な反応を見て感じる部分があったので、言語化してみようと思います。

【目次】

インタビュー記事をまともに受け取るのはナンセンス

大学や予備校のパンフレット、会社員なら社員紹介や就活サイトなど…
インタビューされたことがある人はわかると思いますが、こういう媒体で自分の言葉がそのまま記事に反映されることはありません。

採用HPの社員紹介に載った人って結構会社辞めない?

パンフレットのインタビューなんてものは、

インタビュアー『海外勤務志望はありますか?』

会社員『辞令が出れば行きますけど…』

→【キャッチコピー】将来は海外で大きなビジネスを任されるようになりたい

みたいなことが日常茶飯事です。話題の大学パンフレットを見たところで、

インタビュアー『なぜ東京の大学に?実家から通える大学の方が楽では?』

学生『せっかくなら一人暮らししたかったので』

→【キャッチコピー】誰にも甘えられない環境に…

というのが容易にイメージできました。
そのため、この件について、脊髄反射で学生本人をどうこう言っている人達にピンとこなかったというのが正直な感想です。

もちろん、学生本人が言っていた可能性も否めませんが、そもそもこの手のインタビュー記事なんて話半分(でも多すぎる)で受け取るのが賢明ということで、この章はさっさと結論づけたいと思います。

(個人的には、親元から初めて離れて一人暮らしするんだから、10万ちょっとの仕送りで生活するなら、最初のステップとしてはいいんじゃねーの?という感じ)

 

怒りの原因は2パターン+α

この案件に関するTLを眺めていると、怒っている人はだいたい以下の2パターン。

  • 月13万円の仕送りで『甘えられない環境』とか言うんじゃねぇ!
  • 月13万円の仕送りとか贅沢すぎる!

”苦学生こそがあるべき姿!”というのは言い過ぎですが、この2つを中心に『都内で生活するなら…』『そもそも大学の制度が…』『叩くべきは学生ではなく~…』といった議論が派生していました。

前者については前章の通りです。
この記事では後者の『月13万円の仕送りは贅沢なのか』というテーマを軸に、思うところを書いていきます。

 

大学生活に必要なお金のデータ

まず『大学生活とお金』について、材料となりそうなデータを簡単にピックアップしていきましょう

大学の学費

項目 授業料
(万円)
入学金
(万円)
私立文系 74.6 24.2
私立理系 104.8 26.2
私立医歯 273.7 103.8
国立 53.6 28.2
国立院 53.6 28.2

参考:国公私立大学の授業料等の推移(文科省)など

 

国立は置いといて、私大の授業料は専攻により変わりますね。
特に医歯系大学は初年度に400万近くかかるので、特待生などを除いた一般の学生だと、かなり負担が大きいです。

ちなみにアメリカの州立大では、州民が平均$9,000、州外$24,000程度と…。
州や大学間の差が、日本とは比べものにならないので参考にもならないですが…。
フランスやドイツ、北欧などでは年間10万円以下、あるいは無料の大学も多いですね。

いずれにしても、日本の平均世帯年収から言えば、”学費”が大きな負担となる家庭も多いでしょう。

 

家賃と学生寮

項目 家賃
(万円)
町田(東京) 6.0
調布(東京) 6.4
高田馬場(東京) 9.1
明大前(東京) 7.7
八王子(東京) 5.1
藤沢(神奈川)  6.0 
 京都(京都) 5.2 
吹田(大阪) 5.1 
大通(北海道) 5.1

参考: HOME'S 最寄駅別 家賃相場(1K/1DK)

 

無作為に有名大学からアクセスが良さそうな最寄駅の家賃相場をピックアップしてみました。 まぁこんなもんかな…という感じですね。
大学生には他にも学生寮という選択肢もあります。ほぼ無料〜10万近くの豪華なサービスがついている学生寮まで様々です。

 

生活費とバイト

平均収入(万円/月)
家庭からの給付 12.1
奨学金
(非受給者含む)
3.5
アルバイト 2.4
その他 0.4

 

平均支出(万円/月)
学費
(授業料、通学費、研修費など)
7.3
生活費
(食費、家賃、水光熱など)
8.7

参考:日本学生支援機構 平成26年度学生生活調査

 

全国の国公私立大学生の平均値(下宿、アパートその他)です。
家庭からの給付に授業料を含めず…いわゆる『仕送り』に限定すると6〜8万程度でしょうか。

平均値と書いていますが、生活費の内訳を見ると家賃+水光熱3.8万/月、食費2万/月程度となっており、かなりカッツカツな生活を送っています。
東京に限定すると家賃などはもっと上がりそうですが…

  

『大学生活とお金』のまとめ

うーん…大学時代、周囲の友人を思い返してみると『そんなもん…?』な点が多いですが…
公的機関のデータですが、特にバイト代2.4万/月というのが謎です…

授業全部出てフル単とって、B4からは研究室入って、部活&サークル兼務して、飲食バイト週3夜だけの僕ですら4〜5万/月は稼いでた気が…
まぁ、このへんは触れると火傷しそうなので止めておきましょう(白目

こう見ると『平均』に当てはめてしまえば、月13万円の仕送りは『まぁまぁ恵まれてる』っていう結論になりますね!以上!

 

と、ここで終わるのもつまらないので、もう少し大学の問題点について少し言及してみましょう。

 

『ガラパゴス化』が進む日本の大学の問題点

反対意見を承知で言えば、都内の大学で下宿させるなら、仕送り月13万くらいはあげた方が良いと思ってるんですよ。

僕はこう見えて大学は『学問』のために行くもんだと思っています。
奨学金のプレッシャーとバイトに圧迫される環境よりも、時間、金に余裕のある環境の方が明らかに成長しやすいわけですからね。綺麗事や根性論抜きにして。
もちろん意欲的な学生に限りますが。

ただ、もちろん所得の問題で負担が大きいのはわかっていますし、そもそも今の日本の大学にそこまで投資する価値があるのかという疑問もあります。
iPS細胞で最先端を行く京大など、主体的な姿勢で学べれば、良い環境が揃っている大学も多くあります。国公私立問わず。

しかし、そうでない大学も多いわけで…

このへんを少しだけ触れておきたいと思います。

 

大学進学とお金の問題をカテゴライズしてみると…

  1. 所得に余裕があり、全く不自由ない大学生活を送れる
  2. 意欲はあるが、所得に余裕が少なく、バイト漬けや奨学金、国公立のみ進学可など『選択』をせまられる
  3. 意欲はあるが、所得に余裕が無く、奨学金、特待生(授業料免除)などを活用しないと進学そのものが難しい

こんなところでしょうか。
成績が良い学生なら、授業料免除などの制度を活用できます。
しかし『意欲があるが家庭の所得が少ない』学生のほとんどは、大学進学〜卒業の過程で何かしら金銭的なハードルに引っかかってしまうのが現状です。

 

大学と政策

『大学無償化』というキーワードは定期的に議論されます。

安倍首相は1月の施政方針演説で「誰もが希望すれば高校にも専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければならない」と述べ、高等教育の無償化に意欲を示した。

引用:日本経済新聞

(財源確保できれば)所得が少なくても大学に進めて万々歳じゃないか!
…とはいきませんよね。

『誰でも大学に行ける』環境というのはベストではありません。

 

大学と学生のレベル

学歴社会や新卒の価値がどうのこうの言われますが、大学が乱立したせいで、まともな求人に対して大学生の数は飽和している状態です。

名前を書けば入学できる大学…
もちろん中には優秀な学生もいますが、専門知識もつかない、新卒チケットとしても評価されない…インスタントな友達が作れる以外のメリットがないような大学もあるわけです。

海外と比べて、上位校に限れば日本の『入試』のハードルは高いです。
その代わり『卒業』にはハードルをもはや設けていないわけですが…
これが『日本の大学のガラパゴス化』その1。
その状態で門戸だけ広げると悲惨な状況になることは見え見えです…

『最低限には優秀』あるいは『それなりに意欲がある』学生以外を除外するルールを作らないといけません。

何も考えずに大学に進学した学生より、工業高校で手に職を付けて大手メーカーの技術職に入り、最終的に前者以上の待遇を得ることはよくある話です。

 

企業が求める学生と『就活予備校』となる大学

大学が就活予備校()と言われてるのは昔からですね。

正直、中位以下の私大理系学生は修士で上位国立に移った方が良いと思いますよ。
学歴ロンダどうのこうの言われますが、同じ大学に残るより、新卒採用で評価されるのは現実です。旧帝でも修士課程なら半年勉強すれば受かります。
制度があるなら活用しない選択肢はありませんからね。
(その代わり、個人的には修士でもジャーナル提出レベルの研究成果は求めるなど、進学後にハードルを設けるべきだと思いますが…)

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これらの問題の根底には『大学で授業も受けず遊びまくっていた学生』を評価してしまう日系企業があると考えています。

空気を読むだけのコミュニケーション能力と、接待ゴリ押しによる営業スタイルが根付いている企業はまだまだ多いわけです。
そういう企業にはこういったなんちゃってリア充の学生がウケるわけですよ。

冒頭の『優秀』で『意欲のある』そして『まじめ』な学生よりも…。

もちろんインテリだけが取り柄の学生も問題です…
国際学会などで、海外の教授、研究者と飲み会などに参加すると、ラフな口調で学問からキャリアまでガッツリ議論を求められる”コミュニケーション能力”が求められます。

コミュ力コミュ力と言いますが、日本の大学、日系企業が求める”コミュニケーション能力”にも、一種のガラパゴス化が進んでいるのではないでしょうか?

大学の費用や大学生活を議論する前に、その先の状況(企業や必要なスキルなど)が変わらないと、根底は変わりませんよ。

 

おわりに

最後にまとめておきます。

  1. 件の大学パンフの学生本人について言及するのはナンセンス
  2. 一人暮らしをしながら、本気で勉強・学問に専念するなら、月13万くらいの仕送りは妥当
  3. 問題は意欲のある優秀な学生が、所得差によって弾かれやすい日本の制度
  4. ただし、受け身の姿勢で”大学で学ぶ”ことから得られるもののクオリティには疑問
  5. その根底には日系企業のスタイルに問題がある

話がだいぶ散らばってしまいましたが…僕の意見はこんな感じです。

自身の学生生活を重ねて叩いていそうな人が多く感じましたが…
信憑性が高いか低いかわからないパンフを材料に実名の学生本人を叩くのは問題外ですが、せっかく様々な議論ができそうなテーマなので、どうせなら違う方向に持っていければ良いと思いますね。