【企業と世代交代】プロパー老人と新卒に挟まれる中途入社社員の憂鬱

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会社紹介において未だに”平均勤続年数”が書かれる日系企業には、まだまだ終身雇用の”社風”が残っています。
声の大きい人が『転職市場が活発化』『年功序列は時代遅れ』と言っても、現実はどうでしょうか。
今後、大きく体制は変わるでしょうが、これらはまだまだ”例外的”かつ”一部”です。

『長く務めること』を前提とすると、企業は業績の悪い時期は求人を絞り、景気の良いときには採用人数を増やす…
非常にわかりやすいトレンドとなります。

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出典:求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移(第31回 ワークス大卒求人倍率調査)|リクルートホールディングス

バブル崩壊の90年代初期や、リーマンショック以降、新卒の求人倍率は急激に落ち込んでいるものの、団塊世代の大量退職が騒がれた’08卒前後では、わかりやすく上昇しました。

こうなると企業では世代ごとの人数比がアンバランスになり、一定の年齢層に社員が偏り、氷河期世代がゴッソリと抜ける状態となります。いわゆる人材の”空洞化”ですね。
競争力のある企業は中途採用で穴を埋めますが、毎年一定数の新卒を採用している大企業では、そもそもダメージが少ないでしょう。
毎年数人だけ…業績により0もあるような中小企業の方が、人材の確保に苦しんでいます。

さて、無事、中途採用で穴を埋められた企業はと言うと…
これはこれで問題が山積みです。
今回はそんな”埋められた世代”から見る風景を書き残しておこうと思います。

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”おじいちゃんと新卒だけの日本企業”というフレーズ

今回この記事を書く動機となったのが、BLOGOSに掲載された以下の記事です。

氷河期世代を冷遇しておいて「技術力ある即戦力」なんて虫が良すぎる! 「おじいちゃんと新卒だけ」の日本企業|BLOGOS

「これ本当にそうで、中間層がゴッソリ抜けているので会社に大量のおじいちゃんと新卒しかいない。おじいちゃんは新卒君に仕事を教えることができないので仕事は30歳くらいの派遣社員に教えてもらうしかない」
「工業系の人から『氷河期世代切り捨てて技術継承出来なくなって、今死にかかっている会社だらけ。お前の業界もきっとこうなるぞ』と言われたのを思い出した…」

引用されているツイッターでは、アンバランスな社員構成に悩む人の切実さがうかがえます。

新人が入る会社はまだいい。ツイートには、自分の後に採用がなく後継者が育たず、職場は高齢化したまま定年前後の人が辞めていく悪循環を語り、「このままじゃ10年先につぶれる」と危機感を募らせる人も。これは多くの日本企業、ひいては日本の姿そのものを映しているようで不安になる。

『世代交代』『技術継承』と簡単に言いますが、管理職世代(あるいは高齢社員)が新卒を直接教育するとなると、コミュニケーションの壁があり、技術の壁があり、思想の壁があり…簡単ではありません。
技術系職種、とくにIT、WEBに関しては新卒社員の方が高い”知識”を持っていることも。

となると、このギャップを埋めるのは中途入社の”即戦力”社員!
最低限の教育により、(新卒よりは)短期間で実績を求められつつ、下の指導にもあたる…
外から入社した人間にこれを求めるわけですから、同世代のプロパー社員*1よりも優れた能力が必要です。

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穴埋め社員の苦悩と愛社精神

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今の会社は、しばらく新卒を取らなかった期間があり、ぽっかりと世代が空いていました。
最近は業績が安定してきたせいか、新卒も積極的に採用していますけどね。僕も採用担当になっていますよ!

さて、この”空洞”を埋めたのが、僕を含む中途入社組。

自分が即戦力かどうかは疑問ですが、もともとNO役職だった平社員が、中途入社とともに役職を与えられ、部下を持つことになりました。
プレッシャーなどはなく、マイペースにやらせてもらっていますが(期待されてない?)、仕事以外に難しいと感じる部分がいくつもあります。

特に大きなギャップを生んでいるのが、プロパー管理職の『愛社精神』です。

新卒は何も知らないまま、ニュートラルな状態で入社します。
これは中途入社も同じ。スキルはあっても、会社についての思想はまっさらな状態。

その状態の僕たちに『この会社は素晴らしいだろう』という雰囲気で近づいてこられても、距離感を感じてしまうのは必然です。

こういった愛社精神のある年代の多くは『めちゃくちゃ良い人』だから困る。
仮にマウンティングやパワハラをかましてくるクソ上司であれば無視するだけなのですが、彼らは心から会社が好きで、能力も高いのです。
能力があるだけに尊敬もされている…
その状態で愛社精神をばら撒かれると『お…おぅ』とは思いつつも、無下にはできないというのが正直なところ…。

『(長く勤めるとはこういうことなのか…?)』というモヤモヤした感情を覚えます。

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温度差とスタンス

『なんか温度差感じますよね。』

地方支店に出張した時、同年代の中途社員と話しました。
ストレスも少ない、待遇もOK、それでも感じる『違和感』はなんなのか…?

僕自身、今の会社は”好き寄り”ですし、長く勤める気持ちはあります。
新卒世代を含む若手〜中堅コミュニティでも、大きな不満は上がってきません。
『愛社精神』という言葉が重すぎるだけで、それなりにポジティブな感情を抱いてはいます。

僕らと彼らで違うのは、思想が『会社ありき』なのか『自分のキャリアありき』なのかの違いです。
30年、40年と同じ会社に勤め続けた彼らは、プロジェクトを進める上でも、会社のビジョン、会社のブランドが第一です。
対して、僕らはあくまでも自分のキャリアが第一で、その延長線上にこの会社があるから、ここにいるだけ…と。

計画を立て、実行して、改善する…よくあるPDCAですが…
同じようにプロジェクトを遂行しようとしても、この感覚が合わないことで、少しずつ歪みが生じてきてしまうのです。

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『退職までの年数』を数えはじめる世代

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ここまでは『価値観の違い』で済ませるレベルです。

しかし、中には厄介なおじいちゃん達もいます。
彼らには『長期的な視点』が皆無なのです。

長期計画は短期中期の計画と合わせて実行されるべきです。
個人としても、いざという時のキャリアチェンジを考えると、短期間である程度の”実績”は残しておきたいところ。

とはいえ、プロジェクトの考え方を比較してみると…

『(コイツら…自分が退職(定年)するまでの数年乗り切れれば良いって思ってるな…?)』

という頭でっかちな思想が目立つのです。

『その投資回収する頃って…オマエいなくない?』
みたいな、数年スパンで見れば見せかけの成果は出せますが、長期的にみると厄介なプロジェクトが進んだりもします。

ただ…いざ自分が同じ立場になった時に、下の世代を優遇できるかと言われると…

長いこと下の世代がいなかったため、プレーヤーとしての実権を管理職世代が担い続けていることも問題です。
上手に世代交代できている組織は、プレーヤーからマネージャーへの移行もスムーズにいくため、元気のある世代がプロジェクトをゴリゴリ進められます。

管理職と平社員の関係が、マネージャーとプレーヤーではなく、プレーヤー対プレーヤーになっているというのが、僕が経験した”災難”です。

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おわりに

まとまりのない文章になってしまいましたが、自分なりの”憂鬱”を言語化してみました。

今の会社では、仕事内容や人間関係には満足しており、大きな問題があるわけでもありません。
ただ、こういった『歪み』『温度差』『違和感』を放置したままというのも気持ち悪い。
どこかで主体的に動いて変えていかないといけませんね。

自分自身、そろそろマネジメント中心にシフトしていかないといけない世代です。
数社経験しているということは、それだけ柔軟に思想を変えていけるということ。
スルスルとキャリアを抜けていきたいですね。

*1:新卒から同じ会社に勤める”生え抜き”の社員