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【安心できる食とは】図解で簡単!『食品添加物の安全性評価』

グルメ・食品科学
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食品の安全性、常に話題になりますね。

 

僕は食品メーカーで開発をしている、いわば当事者です。

 

特に話題になるのが、食品添加物

クエン酸や各種ビタミンE等、自然界や人体に存在し、健康効果を謳える物もあれば、人工甘味料のように危険性が議論される物もあります。

 

そもそも、食の安全を脅かすものはなんでしょう?

 

これには、大きく分けて2つのパターンがあります。

 

まずは、食品、素材そのものの毒性といった『先天的なリスク』

もう1つが、不衛生な製造現場での微生物汚染といった『後天的なリスク』

 

 

今回は、前者の『先天的なリスク』にまつわる話。

食品の安全性がどうやって評価されているのか、『食品添加物』を例に、イラストで解説しつつ、考察します。

 

いつもの記事より少し専門用語が多いですが、図解中心に、シンプルに説明していきますね。

 

  

【目次】

 【参考】食品安全委員会HP日本食品添加物協会食品添加物(厚生労働省)など

 

食の安全性は誰が保証する?

食品添加物をはじめとして、農薬医薬品容器包装まで、『食の安全』に関わる物質は主に2つの機関で評価されます。

 

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まずは、『厚生労働省』『農林水産省』等の官公庁がリーダーになります。

その役目はリスク管理…すなわち、

『安全に食べられるように、ルールを決定し監視する』ことが役割です。

 

そして、国の組織である『食品安全委員会』が、科学的なデータを元に、食品添加物の安全な摂取量を評価します。

委員会自体は官僚達で構成されますが*1、実際に実験を繰り返し、 評価を行うのは医師各機関の研究者達です。

『食べても安全な摂取量を、調査して決定する』ことが役割です。

 

安全性試験の手順

基本的に、食品添加物等の安全性評価…

正確には『健康影響評価(リスク評価)』と言うのですが、これらは『動物実験』によって評価されます。

可哀想ですし、どっかの団体が発狂しそうですが、事実なのでしゃーないっす。

 

リスク評価によって『摂取基準』を決めるのですが、主に『体内動態試験』『毒性試験』の2パターンがあり、毒性試験はさらに細かく分かれます。

全てを説明するのは難しいので、今回はそのうち『反復投与毒性試験』を例に、イラストで説明します。

 

リアルな添加物を例にすると、色々な誤解を呼びそうなので、仮定の食品添加物にしましょう。

ここでは、『メガネトマト』という仮定の野菜から精製され、毒性が噂される『ユウリョウノート』という空想上の食品添加物で表現してみます。

 

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ちなみに単位は『mg/kg体重/日』が基本。

『日間の体重1kgあたりの摂取量(mg)』なので…

『この値に体重(kg)をかけた値が、1日に摂取して良い量』

と考えてください。

以下、注釈がなければこの単位です。

 

反復投与毒性試験は、その名の通り、

『試験品を一定の期間、一定量だけ食べさせ続け、異常が出る摂取量を調べる』

手法です。

 

イラストでは、ユウリョウノート10mgまでは異常無しです。

30mgの摂取で、神経系の中毒症状が生じ、異常行動が出始めました。

100mgの摂取では、神経毒による麻痺により数日で死亡してしまいました。

怖いねー、ユウリョウノートは。

 

この場合、10mg/kg/日の摂取量が、異常の見られない『無毒性量』となります。

 

これ以外にも…

妊娠中の雌動物に摂取させて胎児への影響を見る『発生毒性試験』

反復投与を何世代も繰り返し、子孫への影響を見る『生殖毒性試験』

 

など、あらゆるパターンで試験を行い、安全な摂取量を決めていきます。

 

次章では、この『無毒性量』など、摂取量の定義について、お話しします。

 

 

『安全な摂取量』の基礎用語

無毒性量(NOAEL)

まずは、動物試験により、『無毒性量』を決定します。

No Observed Adverse Effect Level(有害な影響が見られない摂取量)で NOAELとも呼びます。

 

前章で示した、あらゆる種類の毒性試験を、あらゆる試験動物で行い、最も低い無毒性量を、その試験品の『無毒性量』として採用します。

 

例えば…

  • ラット【13週反復投与】:NOAEL 3 mg 
  • サル【発がん性試験】:NOAEL 10 mg
  • サル【発生毒性試験】:NOAEL 0.8 mg
  • ウサギ【2世代生殖毒性試験】:NOAEL 1 mg

この場合、サルで試験した発生毒性試験0.8 mgが最も低いので、この値がユウリョウノートの無毒性量となります。

 

一日摂取許容量(ADI)

『一日摂取許容量』『人間が毎日摂取し続けても健康に悪影響が無いと考えられる量』です。

Acceptable Daily Intakeで『ADI』と呼ばれます。

 

これは『無毒性量』に係数をかけるのですが、大体…

『無毒性量の1/100』

と覚えて。試験条件により前後しますが、ほぼこの値。

100という数字は、動物と人間の個体差*2として安全側で設定されます。

 

食品添加物の摂取量は、この『一日摂取許容量』を基本とし、そこからさらに低い値が『食品添加物の使用上限』として策定されるのです。

食品メーカーはこの上限値を守って商品を開発します。

 

遺伝子組換え品は、また方法が違う*3のですが、農薬や化学物質も同様の手順になります。

 

もちろん、これらの値は常にモニタリング((国民の実際の摂取量データなど))が続けられ、必要に応じて改定されます。

 

これ以外にも『半数致死量(LD50)』『実質安全量(VSD)』などの指標もありますが、これ以上は、【よくある質問 (事業者向け) |厚生労働省】などを参考に…。

 

食品添加物の『一日摂取許容量』一覧

代表的な食品添加物の『一日摂取許容量(ADI)』『日本人の摂取量が ADIに対してどの程度か』を示したグラフが以下です。

厚労省HPなどにデータが散らばっていますが、一覧表は無いので、こちらで集約しました。

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※2016年3月時点で公表されているデータによるものです。甘味料は平成23年度、その他は平成24年度の値を基に試算しています。

参考マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査 |厚生労働省

 

こう見ると、日常の摂取量は、 ADIの1%にも満たない食品添加物が多いですね。

ちなみに、上の表で唯一超えているトコフェロールは、別名『ビタミンE』です。

 

『天然』こそ安全なのか?

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さて、とりあえず専門用語を並べて解説してみましたが、いかがでしょうか。

 

『こんなにしっかりと調査されてるんだ!良かった!』

 

…と思う人はいないでしょうね。不安だと思います。

 

僕自身、食品メーカーで開発をしていますが、

『添加物は安全ですよー!大丈夫ですよー!』

とは、よー言いまへん。

 

危険性があるから、調査が必要なのです。

 

ただ、1つ把握しておいて頂きたいのが、

『全ての食品には危険性がある』

ということ。

 

よく『天然物』『オーガニック』安全!安心!健康!という話もありますが、これらにも『人工物』と同等の危険性があると考えるべきなんですよ。

 

キャベツやセロリ、ももなど、毎日みなさんがとっている野菜や果物には、実は多くの天然の化学物質や発がん性物質が含まれています。

出典:商品情報|味の素株式会社

 

天然の食品にも、様々な毒物は含まれています。

それに、特定の遺伝子のみを変化させる『遺伝子組み換え』のみが悪とされ、人工的ではないランダムな遺伝子変異に任せる『品種改良』『育種』をされた野菜が『天然物』として正義になる…

そのような現状は、バイオ専攻、食品メーカー勤務の身から見ると、違和感を感じますね。

 

『まず疑う』ことが大事

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『健康になります!!』

 

『危険な成分が含まれています!!』

 

正直、食品添加物に限らず、食品はそんな単純ではないんですよ。

『健康効果』がある食品は、『有害ではない』という意味ではないのです。逆も然り。

 

全ての食品には栄養、健康、機能面でメリットがあり、間違った摂取量、摂取方法による危険性があるのです。

 

そのため、まずは全てを批判的に見るべきだと思います。

 

例えば【人工甘味料不使用!】の商品があります。

清涼飲料水には砂糖がコンモリ入っていることはよく知られていますね。

天然甘味料を使っていないアイスクリームなんて、100gのうち15gが砂糖だったりします。

どちらが良い!という結論はありませんが、少なくとも『人工甘味料不使用=健康』ではないということはわかります。

 

良くも悪くも『健康!』や『危険!』という単語を極端に捉えすぎな人が多いように感じます。

 

『健康!』

には、

(過剰摂取すると危ないときもあるけど、体に良い効果も見られるから)健康!』

 

『危険!』

には、

(過剰摂取しなければ有用だけど、毎日限界までその添加物を食べさせたネズミは体調崩したから)危険!』

 

このような内容が隠れていることが多いです。

 

食に関する情報は『批判的』に見ながら、日々の食を選ぶべきだと考えます。

もちろん、食を楽しみながら…

 

『食の安全と安心は違う』という話 

 食品メーカーの人間が良く言われるのがこのセリフ。

 

『安全』は客観的で定量的なデータに基づく話。

対して、『安心』は一般消費者の心情に左右される話です。

そして、メーカーの売り上げは後者に左右されるのです。

 

例えば、ある食品添加物が有害ではないという結論が出たとします。

毎日食べても、身体に何の害も無い、これが100%事実だと仮定します。

ただ、事実だとしても、消費者が、

 

『なんか気持ち悪いから嫌だ』

 

と言ってしまえば終了です\(^o^)/

 

食品メーカーがデータを積み重ねようと、結局ココとの戦いになるわけですね。

うーむ、難しい…。

 

僕が『安全』『危険』を断言しないのは、そもそも正解が無いからです。

なので、食品関係の記事でメリットの話をする時は、基本的にデメリットの話も添えて書いています。

1つの食について、それを議論するなら、膨大な数の健康効果の論文と、危険性の論文を比較する必要があり、数千字で収まる話では無いんですよ。

 

僕がヨーグルトを推すのは、いちブロガーとして『ヨーグルトが大好き』なだけなのでやんす。

 

 

あぁヨーグルトが食べたい…

今日はまだ食べてない…

 

最後はコラムっぽくなってしまいましたが、こんな感じで『食品添加物の安全性と危険性』が評価されています。

今日は少しナイーブな問題でしたね。

僕はブログで何かを『断言』する予定は無いですが、雑記を書きながら、少しずつ『情報』として提供していけたらと思います。

 

今後数カ月で考えているのは…

  • 下痢と乳糖不耐症のメカニズム
  • 酵素ドリンク商法について
  • ケフィアヨーグルトの正体
  • 栄養科学的に見る昆虫食(流行ってるらしい…?)
  • 市販ヨーグルトレビュー、チーズの種類まとめ

などなど…

 

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みるおか

*1:一応『中立』という立場のようです…

*2:ヒトと実験動物の種族差を10、さらにヒト同士の個体差を10と試算している。安全係数(SF)と呼ぶ。

*3:従来品種とのタンパク質組成の比較や、アレルギー試験等が主となる