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酵素ドリンクダイエットに騙されない!ニセ健康食品の販売手口を解説してみる

健康・メンタルヘルス 食品科学
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『健康食品』と聞いて何を思い浮かべますか?

 

なんとかゲン、なんとか油、なんとか汁…
うさんくせーのが一杯ありますよね!

 

健康食品にも様々な種類があります。
企業や研究機関がin vitro*1や動物実験、ヒト試験で効果を実証し、政府に認められた食品は保険機能食品と言います。

【過去記事】10分でわかる保健機能食品の基礎【特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品、栄養機能食品】

黒ウーロン茶や各種ヨーグルトなどのパッケージにも表示されている『特定保健用食品(トクホ)』も保険機能食品の一種です。

 

対して、効果があるのかわからない健康食品も数知れず…
”科学的根拠”を示せば、簡単に”機能性表示食品”は表示できるようになったんですけどねぇ…

 

保険機能食品のトピックは以前書きましたので、今回は『よくわからない健康食品』の代表格とも言える『酵素ドリンク(飲む酵素)』『酵素ダイエット』を例に、健康食品業界の販売手口を解説してみましょう!

【目次】

そもそも酵素とは?

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酵素はタンパク質の一種です。

専門用語を使うと『生体内の化学反応を促進(触媒作用)する機能を持つタンパク質』です。
簡単に言えば『栄養以外の機能を持ったタンパク質』と捉えてください。

例を挙げると、

  • DNAを作る
  • タンパク質をアミノ酸に分解する
  • 脂肪を分解する
  • エネルギーを生産する

など、細胞の働き(代謝)は全て酵素によって維持されています。

”タンパク質をアミノ酸に分解する”と書きましたが、酵素の働きは非常に限定的*2なのです。でないと酵素同士や自分の細胞も分解してしまいますからね。
例えば『食肉に含まれるタンパク質の一部のみを分解する酵素』もあります。

生物には数千種類の酵素があり、それぞれ決まった役割のみを果たすことで、代謝が回ります。

精製された酵素は排水処理や食品製造、化成品など様々な業界で使われていますが、話が逸れてしまうので割愛しましょう。

【参考】Innovations in food technology for health.(2006)

酵素が生きたまま体内で働く?

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さて、酵素を含め、タンパク質は、

  1. 【胃酸(塩酸)】食物の構造を破壊(酸分解)、胃の消化酵素活性化
  2. 【胃の消化酵素(ペプシン)】タンパク質を細切れにする
  3. 【膵臓の消化酵素(膵液)】さらに細かく分解し、吸収しやすい形にする
  4. 【小腸の消化酵素(腸液)】アミノや小さいペプチドまで分解され、吸収される

で徐々にアミノ酸(タンパク質の構成単位)まで分解されます。

そのため、生の食材に含まれる酵素は、機能を保ったまま大腸に届くことはできません。 

ペプシンの様に酸耐性*3がある消化酵素もありますが、胃を出れば膵液、腸液にぶっ壊されて終わりです。

『酵素を補う(笑)』ため、製剤化された消化酵素を一緒に食べれば、確かに胃腸を通過してる間に機能するかもしれませんが、消化を促すならジューサーでも使うか、よく噛んだ方が良いです。

そもそも適量をバランス良く食べれば、消化酵素は不足しませんし、肉と油ばっか食ってる奴が、食物の消化性をわずかに改善したところで健康になるわけありません。酵素だのサプリだの飲んでねぇでまず動け。

 

この点については、味博士(Twitter:味博士の研究所 @ajihakase )こと鈴木隆一氏も別の切り口で言及しています。

【リンク】【マジで危険】「飲む酵素」に全力で警鐘を鳴らしまくってみた | 味博士の研究所

市販の酵素ドリンクを調べてみると… 

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さて、酵素ドリンクや『食べる酵素』にも色々な種類があります。
美肌(笑)や酵素ダイエット(笑)など、様々なPRを目にしますね。ここでは、市販品を幾つかチェックしてみましょう。

その前に:清涼飲料水と加熱殺菌

市販の飲み物は、法律上は『清涼飲料水』にあたります。
酒類や乳製品(飲むヨーグルトなど)を除き、お茶もジュースも炭酸も全て清涼飲料水です。

この清涼飲料水ですが、腐敗を防ぐために

  • 【pH4.0以下の酸性飲料】65℃10分以上の加熱殺菌(または同等レベルの殺菌処理)
  • 【pH4.0以上の飲料】85℃30分以上の加熱殺菌(同上)

という工程が必要です。

加熱殺菌により、酵素は壊れ、機能を失います*4
一部、80℃以上で作用する耐熱性酵素もありますが、食品用途ではありません*5

すなわち、飲み物や食べ物に酵素を添加して体の中で作用させることはできないのです。

 

市販品の広告、表示を検証してみる

さて、ここでAmazonで『酵素ドリンク』のキーワードで出てきた商品の説明文を拾って遊んでみましょう。

今、必要なものは「発酵食品=酵素」です。

いきなり新しい概念を作らないでください。

 

厳選された70種類以上の果物、野菜、きのこ、海藻、穀物を3年以上かけて長期発酵熟成させ、黒糖で抽出した植物発酵エキス飲料です。

植物を微生物で発酵させたものをエキス化しただけですね。酵素を添加しているわけではないのです。

 

自然に生息するヨモギやクマザサ、クコ葉、はと麦などの野生薬草植物に加え、有機栽培された野菜、果物、穀物など、なんと86種類もの天然植物原料を濃縮したこだわりの酵素飲料です。

実はこの文章にこの記事のキーワードがあります。
植物のエキスを抽出・濃縮した飲料のようですが、『酵素飲料』と呼んでいますね。

 

ダイエットに関係する代謝酵素は…(中略)

どうでもいいけど、食物の分解・吸収を促進できる酵素を腸まで届けて吸収を良くすると『どちらかというと太る』からな。

どっちにしろ小腸に届けば勝手に分解されるし、代謝系酵素は細胞内に取り込まないと意味ないし。

つまり代謝酵素食って健康ってすっげー怪しいよね。

 

酵素ドリンクには、カルシウムとマグネシウムが豊富に含まれています。
その含有量は計量カップ1杯分(25ml~30ml)でなんと、カルシウムならバナナ3本分(※100g当りの計算)、
マグネシウムならキャベツ半玉(※100g当りの計算)に匹敵する量が含まれています!
たった1杯のミネラル酵素ドリンクで健康的な毎日を過ごせます。

もう酵素関係ねーじゃん。
つーかそれ『普通の野菜ジュース』でいいじゃん。

 

材料に酵素を使わなくても『酵素』と言える理由

さて、市販の酵素ドリンク、酵素食品の成分表示には『酵素』が書かれていません。
一部の酵素は食品添加物として認められており、添加量が少しでも表示義務があります*6
書かれていないということは、添加されていないということです。あるいは虚偽表示です。

 

これは、酵素ドリンク等々に書かれている『発酵させた』『野菜抽出エキス』がキーワードです。

 

酵素はそもそも、全ての生物の代謝に必要なタンパク質です。

すなわち、肉や野菜、微生物を使った食品には全て酵素が含まれているです。

 

言ってしまえば、普通のサラダや野菜ジュースを『酵素入り』と言って売り出しても嘘ではないわけです。
加熱してようが、酵素が入っていることは本当ですしね。

 

わかりますか?

 

なんの変哲もない食品に『酵素入り』というフレーズを加えただけで高い値段をつけたのが酵素ドリンク、酵素ダイエット食品というわけです。

 

『嘘ではない』データの見せ方

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【参考記事】【統計学入門】いかにしてデータは人を騙すのか - NO TITLE

この記事にも書かれているように、健康食品業界に関わらず、あらゆるメーカーは、データを『できるだけ素晴らしく見えるように』見せてきます。

 

『酵素ドリンクを飲んでお通じが良くなる』

例えば、このフレーズも嘘とは言い切れません。

野菜ベースの酵素ドリンクでは、食物繊維により胃腸運動の改善が期待できます。乳酸菌で発酵させることでさらに効果は上がるかもしれません。
酵素があまり関係なくても、『酵素ドリンク』と名付けた商品が健康に寄与していれば、嘘ではないのです。

サラダやヤクルト等の乳酸菌飲料を摂取するのと同じでも、『酵素』と名付ければ数十倍の値段をつけることが出来ますね。

 

納豆やキムチ、味噌なんか大量の酵素が含まれてますよー!*7

【参考文献】

 

『乳酸菌と酵母で大豆を長時間発酵させた酵素たっぷりの万能調味料!!』

 

情弱向けに10,000円/kgくらいで『味噌』が売れそうですね。
いい加減にしろ。やめさせてもらうわ。

話題のトピックや、今あるデータを最大限アピールして販売促進するのは当たり前ですが、限度を超えたり、やり方を間違うと、伊藤園の水素水みたいに逆にブランド力を落とすことにも繋がるんですよね。

 

まとめ

酵素関連食品のポイントをまとめておきましょう。

  • 酵素ドリンクの酵素は加熱殺菌で不活化される。
  • 加熱、胃酸耐性がある酵素も、胃液、膵液、腸液等によりアミノ酸に分解される。
  • エネルギー代謝は細胞内で行われるため、細胞に取り込めない食品由来の酵素が直接ダイエット(脂肪の分解など)に寄与することはない。
  • どんな食品も『酵素入り』は嘘ではないので、ペナルティ(表示違反など)を受けづらい。
  • 元々の食品が持つ効果を利用すれば、『酵素』の名前を使うことで高額な健康食品として販売できる。

こんなとこです。

まぁ好きなら止めませんが…

 

酵素自体は、食品加工や発酵食品には重要な素材ですし、魅力的なテクノロジーも多く研究されています。それゆえ、オーガニック教や健康バカのメディアにオモチャにされるのは残念ですがね。

 

そもそも日々の食生活と運動を適切に維持できている人は、クソみたいな健康食品なんて関係ないですよね。
バックデータも無いような健康食品に頼らないといけない時点で日常生活に問題があるわけで、そっちを見直す方が早いし安いし確実ですよ。

 

メディアやメーカーが『酵素』のようにフレーズを切り取って誇大広告を打つのは昔から変わりません。
それに群がる人もまた同じく。恐ろしい恐ろしい。

 

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*1:"試験管内の"の意味。動物や人を使わずに試薬や分析機器のみで完結する実験を指す

*2:酵素は最適な温度、pH(酸度)が揃った環境下のみで、特定の物質(基本的には1つの物質)のみを生産、分解する

*3:塩酸と反応し、pH2の環境下において、構造が変化することで消化作用を発揮するので”酸耐性”とは少しニュアンスが異なるが…。

*4:加熱により構造が破壊され、触媒機能を失う。”失活”と呼ぶ。

*5:そもそも80℃以上で高活性の酵素は体温付近では不活性のため、『体の中で働く』という酵素ドリンクのコンセプトには合わない

*6:製造途中に加工目的で添加し、殺菌等で完全に酵素の働きを不活化した場合は『加工助剤』扱いとなり表示しない

*7:発酵に関わる微生物は、旨味を出す酵素を大量に生成する株が生産され工業利用されている。また微生物は植物等に比べ、相対的にタンパク質含量が多い(植物のようにエネルギーを貯めるでんぷんや、人間みたいに無駄な脂肪が少ない)。