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実父に自転車窃盗の罪をなすりつけられる男:ノンフィクション自転車小説2

日常
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自転車運に恵まれない…って話その2です。

 

我が家の両親は、とても仲が良かった。

父は母が大好きだった。母も父が大好きだった。

 

僕が大学生の頃、そんな両親が珍しく喧嘩をしていた…。

 

母『自転車が壊れたんだけど、修理してくれない?』

父『あれはダメだ。もう買い換えるしかない。』

母『もったいないから、直して使いたいんだけど…』

父『1万円あれば買えるだろう。』

母『なによ!今度は捨てられてる自転車持ってこないでよね!』

父『…………』

 

僕は、忘れたくても忘れられない、忌々しい出来事を思い出した……

 

 

高校時代のある日、母の使っていた自転車の調子が悪くなった。

 

その日の夜、僕は親父に、

 

『お前が使ってる自転車をお母さんにあげてくれないか。』

 

と言われた。

 

意味が良くわからない。

 

 

なので、

 

 

『意味が良くわかんないんだけど。』

 

と正直に言った。

 

 『お母さんの自転車の調子が悪いから、お前のと交換してあげてくれ。』

 

と説明された。

 

そういう事じゃない。

日本語の意味がわからない、という意味ではない。

なぜ僕の自転車をオカンの壊れた自転車と交換しなければならないのだ。アホみたいに理不尽な話だ。その理由をわかりやすく納得できるように説明しやがれと言ったんだ。

 

『嫌だ。』

と言った。

 

翌日、僕の濃紺で洒落た自転車の後部座席には、買い物の荷物を載せるための荷台が取り付けられていた。

完全なママチャリである。どう見てもオカン仕様である。

 

それから僕は、母がお下がりの小汚い自転車に乗り始めた。

運転してるときは、常に”カタタタタタ”と音がする。

ギヤなんてもちろんついてない。ちなみに母にあげたチャリのギヤは6段式だ。

僕が受け取ったチャリには、運転するために最低限の修理だけが施されていた。

 

月日が経ってもこの事実に納得することはなかった。

 

それから数ヶ月が過ぎ…

ゲームショップで新しいゲームを買った僕は上機嫌で帰宅していた。

ただどんなに気分が盛り上がろうとも、自転車に乗る度に、若干テンションが下がるのは言うまでもない。

 

f:id:salawab:20151218150052j:plain

 

いつもの様にカタンカタンと音を鳴らしながらチャリをこいでいると、警察官2人に声をかけられた。

よくある防犯登録の確認である。

 

すぐ終わらせようと素直に接していたが、警官2人は、なかなか僕を離さない。

 

と、そこで警官に、

『キミ、コレ本当にキミのかい??』

と問い詰められた。

 

『あーはい、僕のです。元はお母さんの物ですが、今は僕の物になってしまいました。』

 

と正直に答えた。

 

すると、

『防犯登録のシールが剥がされてるんだけど…心当たりある?』

 

……?

もちろん心当たりがない。

 

『な…ないです…』

 

『登録ナンバー確認したら所有者が君の苗字と違うんだよねぇ。本当に君のかい??』 

 

『え…最初は父ので…それが母のになって…それで僕の自転車と交換して…』

 

『…とりあえず駅の交番まで来ようか??』

 

警官2人に厳重に挟まれ、交番まで誘導される高校生の僕。

 

それまで真面目に生きてきた。警察にお世話になったのは初めてだ。
警察の道場で剣道も習っており、警察官には慣れていたが、初めて警察官を怖いと思った…。

 

f:id:salawab:20151218150053j:plain

 

駅前の、いつもは通り過ぎるはずの交番の奥に連れていかれた。

中は意外に広く、奥にはさらに数人の警官がいた。

 

椅子に座らされ、事情聴取。

事情も話すも、もちろん納得はしてくれない。

 

 

とりあえず母に電話をした。

息子が警官に拘束されてる事実に母は慌てていた。

 

第一声は、

『アナタ何したの…!!?』

であった。

 

何したも何も、元は強制的に自転車を交換させられたせいである。

 

事情を話すと、態度は一変した(当たり前だ)。

 

『大丈夫!とりあえずお父さんに電話するから、大丈夫よ!』

 

と母は”大丈夫”を連呼し、僕を励ます。

こちらサイドとしては大丈夫ではない状況がかなり前から続いている。

 

母が父に連絡している間、僕は警官5人に挟まれポツリ、交番で待機させられていた。

 

 

その後、母から警察に連絡が入り、僕を捕まえた警察官から真実を聞いた。

 

あのボロい自転車は、大学職員の親父が、大学に長いこと放置されていた自転車を持って帰ってきたものだったのである。

それを自転車を持っていないオカンが使ってたのだ。

そして、なぜか僕の自転車と不公平なトレード移籍が起こったのだった…。

防犯登録のシールは自転車を放置した人間が剥がしたのであろう。あるいは、親父が…。

 

『(ええぇえぇぇえ??!!)』

 

とあっけにとられた僕は、警官に同情され、晴れて無罪放免となった。

拘束時間は一時間半にのぼっていた。

『…災難…だったね。』

警察官がなかなか言わないであろう言葉に僕は一礼し、歩いて帰路についた。

自転車はもちろん没収された。

 

親父的には盗んだ意識はなく、 『放置自転車で、お母さんにちょうど良いがあったから持ってきた』らしい。

一般的に、それを”窃盗”と言うのではないか…。

そもそも自転車ぐらい買ってさしあげろ。

 

 

帰宅後、母に向かって声を荒げていると、

『お父さんも悪気があったわけじゃないのよ…』

と母は僕をなだめる。

 

悪気はなかった?本当に悪気はなかったのか?というより大の大人の言い訳がそれでいいのか?

 

帰宅した父は僕を見て、一言だけ発した。

 

『……どうだった??』

 

『どうもこうもねーよ!!』

 

発狂する僕は、その後お詫びに新しい自転車を手に入れた。

 

親父は警察に行って叱られた。

明らかに放置自転車だったこともあり、厳重注意で無罪放免された。

 

昨年、母が死ぬまで、両親はずっとオシドリ夫婦だった。

 

厳格で父に甘い母と、勉強はデキるがイイ加減な父に育てられた兄姉達はみんなしっかり者だ。

 

なんだかなぁ。

 

自転車シリーズは以上で終了です。 

 

ノンフィクション自転車小説その1もどうぞ。

www.recomtank.com

 

みるおか