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新品の自転車を貸して事故られる男:ノンフィクション自転車小説1

日常
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僕は『自転車運』にとことん恵まれない。

 

自転車シリーズの1回目は僕が小学3年生の頃のお話です。

 

  

同じクラスに、アズマ(仮名)という男の子がいた。


今でこそ、彼は結婚して2児の父になったが、小学生の頃はヤンチャで乱暴、そして化け物の様に足が速かった。

そして不死身だった。ガキ大将にボコボコにされようが何度でも立ち上がる、とにかくタフな男の子だった。

 

ギャグセンスも抜群で面白いやつだが、キレるととにかく怖い奴。そんな印象だ。

"キレると怖い"と言うのは、普段が温厚という話ではない。

ケイドロでチームが負けただけで、足の遅いデブ(戦犯)をボコボコにするような、ちょっと頭のイカれてる奴でもあった。

 


その頃の僕達は放課後、同級生15人くらいで毎日のように集まり、公園周辺で鬼ごっこやサッカーをやっていた。

 

遊んでいる最中、うっかり彼を怒らすことを皆は恐れていた。


住宅街で鬼ごっこなどやっていると、周りはみんな建物なので、彼がどこから(猛スピードで)やってくるか検討がつかない。

楽しい鬼ごっこがリアルなサバイバルへと変化してしまうのだ。

ちなみに捕まったら馬乗りでボコボコにされる。

 

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それでも彼と皆が友人のままなのは、普段の彼が面白く、気さくな奴だったからだ。

 

 

ある日、僕は新しいマウンテンバイクを買ってもらった。

カラフルで、派手で、小学4年生の僕は飛び跳ねて喜んだ。

それまで、兄姉の多い僕は、何をするにもお下がりばかり。

自転車も兄のお下がりの小汚い自転車を使っていたので、新品のマウンテンバイクがとても嬉しかった。

 

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新しい愛車を手に入れて数日後、またいつものようにクラスのみんなで遊んでいた。


マウンテンバイクに乗っていく度に、周りの皆は

『おぉ~』

とか、

『いいなぁ』

とか言ってくる。

それがとても気持ち良かった。

 

すると友達の一人が、ある遊びを考えついた。


公園の砂場に小さいお山を作り、自転車で走っていき、ジャンプして自転車で飛び越えようという試みだ。

 

『(こいつは頭がおかしいのか?)』

 

僕はそう思った。

なぜせっかく買ってもらったマウンテンバイクをそんな危険な目に遭わせにゃならんのだ。バカか!オイみんな、さっさとサッカーやろ…

 

周りは最高に盛り上がっていた。


今思えば危ないし面白くもないようなことだが、小学生の皆にとっては、スリルがあって最高に盛り上がった。僕を除いて。

 

まず最初にやるのはアズマ(仮名)である。


彼は僕の新しいマウンテンバイクに乗っていた。

 

もう一度言う。

 

彼は僕の新しいマウンテンバイクに乗っていた。

 

意味がわからなかった。

 

小学生の頃、僕はとても大人しく、何をされてもあまり文句を言わなかった。

人を笑かすのが好きだったので、『(面白ければ良いか…)』と思うことも多かった。

皆も基本的にイイやつだったので、度を超えたイジメのようなことまではされなかったというのもある。

 

ただし、少なくとも、この状況を

 

『(面白いから良いか…)』

 

とは思わず、

 

『(イヤァァァアア!私の自転車ぁぁぁあああ!)』

 

としか思っていなかった。

 


とりあえず僕は自分の新品のマウンテンバイクが砂まみれになるのを遠くから見守ることになった。

 

多少

『納得がいかない。』

みたいな事を言った気もするが、

『今日は自転車で来ていないから。』

という理由で却下された。

 

僕はとりあえず、”やらないっていう選択肢はないんだ”ということを悟った。

 

ソワソワ…

ソワソワソワソワ…

 

僕はソワソワしていた。とりあえず無事にマウンテンバイクが返ってくればそれで良かった。

 

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アズマ(仮名)は公園を出て50mほど先の交差点でスタートの準備をしていた。


砂のお山(標高約20㎝)を飛び越えれば良いだけなのに、何故か完全に無駄な長さの助走を取っていた。


彼が乗っているのは僕のマウンテンバイクだ。

 

そして彼は走り出した。


直後に車に衝突した。


彼が乗っていたのは僕のマウンテンバイクだ。

 

想定外だった。

 

不幸中の幸いか、自動車は曲がる直前でゆるいスピードだった。

マウンテンバイクもスタート直後でゆるいスピードだった。

そのため、不死身のトーゴ(仮名)はちょっと血を流しただけで済んだ。


『大丈夫か!?』

みんなは彼に近寄っていった。


『大丈夫かぁぁああ!!??』

僕もマウンテンバイクに近寄っていった。

 

 

なんとか走れそうだった。

 

僕の買った新品のマウンテンバイクはなんとか走れそうだった。

 

文章が不自然だ。

 

後輪はカタタタタ…という音を常時発するようになった。走行中に音が出るので、鈴を鳴らさなくても歩行者に気づいてもらえるようになった。


ナイキによく似たカッコいいロゴが自転車にできた。ただの傷だった。


綺麗な長方形だったカゴはひし形に変形していた。

 

僕は中1で新しい自転車を買ってもらうまで、そのマウンテンバイクを使い続けた。

約3年間、後輪は鳴り続けた。


アズマ(仮名)は指に絆創膏を巻いて翌日学校に来た。

 

僕は、 

『ケガは大丈夫?』

と訪ねた。

 

彼は、 

『大丈夫。軽いケガ。自転車は?』

と答えた。 

 

『大ケガだよ。』

僕は素直に答えた。

 

地元の友人と会った時、この事件は今でも伝説のように語られる。

 

そしてそれ以来というもの、僕はことごとく自転車絡みの事件に巻き込まれるのであった。

 

今回はここまで。

 

続編はこちら。

www.recomtank.com

 

 

みるおか